昭和・北海道地図資料館

最新全国旅行案内地図

昭和31年 講談社(婦人倶楽部付録)

2004年4月,札幌の南陽堂書店にて2500円で購入。出版年は記載されていないが,周遊券の案内が掲載されていることから少なくとも昭和30年2月以降,また日田線,白新線が全通していないことから同31年春以前であり,「婦人倶楽部新年号」とあることから,昭和31年1月(実際には30年の暮れ)に出版されたものだと推定される。ひろげると横に2メートル以上ある折りたたみ式の地図で,当時雑誌の付録としてこの手の地図が付けられることが多かったらしい。


まだまた旅行=鉄道旅行の時代である。地図は平凡なもの。根北線,美幸線,白糠線は開通しておらず,富内線,羽幌線も全通していない。札沼線の石狩沼田〜雨竜間は戦争の影響で線路がはがされていたが,この年11月16日に営業を再開する。6月19日には北海道第1号機関車の義経号が50年ぶりに札幌〜小樽間を走行した。

裏面が面白い。


蒸気機関車の時代ならではのアドバイス。

 
新婚旅行のメモ。まだお見合い結婚が主流だった時代だから,新婚旅行にも今とは違った意味合いがあったのだろう。婦人倶楽部の付録ということで,新婦向けのアドバイスが書かれている。


昭和30年2月1日に発売が開始された割引周遊券。当初は「一般周遊券」のみで,これは周遊指定地,準指定地を組み合わせて周遊経路を考えなければならないという難解な制度だった。一般周遊券はワイド・ミニ周遊券と共に1998年3月廃止された。

一般周遊券は基本的に周遊指定地及び準指定地を周遊するための切符で,指定地以外に足を延ばすことや,極端に迂回した経路は認められていなかった。周遊指定地を2箇所以上訪れることが条件の一つであり,準指定地はこの箇所数にカウントされない。周遊指定地は,私鉄,バス,航路よってのみ到達できる観光地であり,すなわち国鉄線以外の交通機関を利用することが条件になっていた。もちろんこれらは実際に乗車する必要はなく,観光目的以外で一般周遊券を利用する場合は,掛け捨てでバス乗車券を購入するというテクニックもあった。一方,準指定地には国鉄の駅そのものが指定されるケースが多かった。


広告も面白い。現在も販売されているトラベルミン。この頃の旅行指南書を見ると必ず乗り物酔い対策について書かれている。昔の人は自動車に乗る機会が少なかったので酔いやすかったのだろうか。あるいは道がでこぼこだったためだろうか。

 
強心剤の「救心」,鎮痛性貼り薬の「イチバン」。

そのほかにも医薬品の広告がずいぶんと多い。この頃の旅行者には病人が多かったのだろうか。

「楽しい旅行におわすれなく……胃の疲労回復,太田胃散
「楽しい旅行,仁丹……先ず乗物の酔や疲れを防ぐ仁丹のご用意が肝要 仁丹で旅楽し!」
「旅行のお供に忘れずに,ペニシリン軟膏
「旅行カバンに忘れずに入れましょう,美眼薬・スマイル
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