昭和・北海道地図資料館

改訂最新版全国旅行案内地図

昭和35年 講談社(講談倶楽部昭和35年10月号付録)

2004年4月,札幌の南陽堂書店にて2000円で購入。質の良い紙を使用しているのか,真っ白なままでまったく変色していないのに驚かされる。

同じく講談社発行の昭和31年最新全国旅行案内地図と同じ図版である。2つの地図を比較して鉄道路線やバス路線のほかに異なる点は,丘珠(札幌)〜西春別〜女満別を三角形で結ぶ航空路線が追加されていることである。女満別空港は昭和10年に気象観測用飛行場として設置されたのが始まりで,その後海軍航空隊基地となったが,昭和27年米軍に接収され,同31年に女満別町に返還された。昭和32年7月に北日本航空(S28設立→S39日本国内航空→S46東亜国内航空→S63日本エアシステムと変遷)が丘珠〜西春別〜女満別の回遊航路を設けた。ここでいう西春別飛行場は,旧陸軍が建設した計根別第四飛行場で,現在の航空自衛隊計根別飛行場のことである。旧陸軍の計根別飛行場は偽装用の飛行場を含めて4か所ないし5か所建設され,現在は第四飛行場のほか第一飛行場が別海フライトパークとして利用されている。
一方,現在の中標津空港はもともと海軍の飛行場として建設されたが,実用には至らず戦後用地は開拓地として入植者に払い下げられた。昭和32年,放置されていた滑走路を利用して北日本航空がセスナ機を利用した根室一円の遊覧飛行を実施し,同34年10月には西春別飛行場に代わって丘珠線が開設された(したがって,本来この地図には中標津からの線が描かれていなくてはいけない)。しかし定期便はなかなか開設されず,丘珠線が通年定期運航となったのは昭和49年10月のことである。


上空遊覧案内 東京上空遊覧コースは13分で1300円。当時上野〜青森の鉄道運賃が1250円,3段式2等寝台の下段が960円。ちなみに現在の相場を見てみると,セスナ機で13分の遊覧飛行なら7000円程度であろうか。上野〜青森の鉄道運賃が12310円,3段式B寝台の下段が6300円である。相対的に鉄道運賃が高くなったのか,あるいは飛行料金や寝台料金が下落したのかわからないが,当時の1300円という料金はびっくりするほどの高額ではないように思う。


飛行機を使った新婚旅行コース 飛行機による旅行が急速に普及していった頃。しかし,2人での往復料金が38000円というのは,現在の価値に直すと30万程度になると思われ,あまりにも高い。それこそ新婚旅行のような一生に一度の旅行でもなければ庶民は利用できなかったであろう。

 
旅行の持ち物 最近は旅行の持ち物を少なくする傾向にあるが,新婚旅行の場合だけは一とおりのものを持って行く必要があると前置きした上で,上のような解説が書かれている。新婚旅行に腰紐や伊達巻を持って行く人は今では少ないだろうが,海外旅行の場合には日本人としての誇りを持って,できれば和服で行きたいものである。最後に「旅行先によっては,味の素やバターを持って行くと重宝することがあるものです」とあるが,少々意味不明。


北海道温泉案内 湯の川,昆布,定山渓,洞爺湖,登別,天人峡,層雲峡,阿寒湖畔・川湯・弟子屈の各温泉郷が紹介されている。このうち,昆布温泉は現在ではやや忘れられかけた存在となっている。青山温泉には不老閣という温泉旅館があったが,昭和35年に焼失。紅葉谷温泉は現在のホテルあしりニセコ,成田温泉は現在の薬師温泉旅館である。


普通急行・準急行料金,寝台料金 昭和35年7月1日に等級制の変更が実施され,それまでの2等が1等に,3等が2等にそれぞれ格上げされた。同日北海道では準急「オホーツク」と準急「宗谷」が運行を開始している(「オホーツク」は臨時列車として昭和34年9月に登場)。なお準急行は昭和43年10月1日の改正で廃止された。

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