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1. 入口の怪

過去7回の鬼峠フォーラムで,峠を越えられたのは5回,うち昭和4年(1929)〜昭和35年(1960)年まで使用されていた2代目の鬼峠,通称「仏コース」を越えたのは,2007年と2010年の2回である。

初代の鬼峠は地図が不確かとはいえ,地形に随順な道であり,ほぼ正確にたどることができていると考えている。しかしながら,2代目の鬼峠に関しては,我々が実は往時とまったく違うルートをたどっているのではないかという疑念を,何人かのメンバーで共有していた。2代目の鬼峠が生活道路としての役目を終えたのは,54年前のことで,さほど古い話ではない。現役時代に峠を歩いていた方々とも,一緒に峠を越えている。それでもなお,ルートに不可解な部分がかなり残されているのである。

そこで,今年は,2代目の鬼峠をもっとゆっくり,じっくりと越えたいという数年来の懸案を,実行に移すことにした。ただ,やはり大人数では難しいということで,フォーラムの前の非公開プログラムとして,メンバーを限定して実施することとなった。非公開部分のプログラムは次のとおりである。


   8:00 道の駅集合(限定メンバー5名を想定)

       新鬼峠ルートファインディング

   13:00 ルートファインディング終了

   == これより一般参加


●2014年3月21日(金)

道の駅に9時集合。集合時間が1時間遅くなったのは,天候の見極めのためと,峠の頂上まで除雪され,自動車で移動できることがわかったためである。

2代目鬼峠は,1958年の地理調査所による測量によって,恐らく初めて地図に正確な線形が記載されている。この測量に基づく5万分の1地形図が刊行された1962年には既に廃道となっていたが,ぎりぎり測量が間に合ったのは幸いなことだった。地形図も,時代が遡るにつれて,精度が劣っていくが,今日はひとまず地形図に記されたルートが正しいものと信じて,地形図に忠実なルートファインディングを試みたい。

国土地理院発行2万5千分の1地形図「ニニウ」
昭和49年測量,平成20年更新
国土地理院発行5万分の1地形図「日高」
昭和33年測量,昭和42年資料修正

地形図が正しいとするならば,いつも峠の入り口と称している場所自体,明らかに誤っている。これまでの鬼峠越えでは,JR石勝線鬼峠トンネル坑口のすぐ南側から「ふるさと林道鬼峠線」として整備された道を登ってきたのだが,上図右側の地形図(以下,「旧版地形図」という)を見ると,かなり手前(東側)から,一旦小川を遡って山に入っている。

A地点。石勝線弓立沢橋梁下をくぐる。この奥に,つい最近まで居住者のあった家屋1があり,しっかりとした道がついている。旧版地形図を素直に眺めれば,この道が2代目鬼峠ルートと思われる。

B地点家屋1を過ぎ,川を渡る。往時,馬車は渡渉したのか架橋されていたのかわからないが,渡りやすいところまで遡って渡ったということだろう。

道らしい雰囲気もあり,ここまでは順調に見えた。

C地点。しかし,ここで行き止まってしまった。徒歩であれば,強引に突き進めないことはないのだが,馬車が通るような地形ではない。20分ほど付近を探索したが,どうにも進路を見いだせず,一旦道道に撤退した。

地形図を再掲する。

国土地理院発行2万5千分の1地形図「ニニウ」
昭和49年測量,平成20年更新
国土地理院発行5万分の1地形図「日高」
昭和33年測量,昭和42年資料修正

ここで鬼峠越え隊長の細谷氏から,思いがけない仮説が示された。旧版地形図の家屋は現行地形図の家屋2ではないかというものだ。そうすると,家屋と道路との位置関係が南北逆になるが,往時は道路がいまより鵡川寄りを通っていたのではないかという。実際そうであったとも聞く。そして,旧版地形図のの上流部は現行地形図の川1に違いないが,鵡川との合流部に関しては川2を示しているのではないかという。とすれば,家屋,道路,川の位置関係はつじつまが合う。

実際に歩いて確かめてみる。川1が鵡川に合流するD地点。あえて渓流となるB地点までさかのぼるよりも,このように平たんな下流部で渡ったほうが楽だという考え方もありうる。

家屋2。現在の車道に面しては建っておらず,南側を道路が通っていたと考えて自然な配置だった。住宅の構造からすれば,1958年以前の築である可能性が高く,旧版地形図に唯一記載されている家屋がこの家屋2だと考えるのも道理にかなっている。

そして,家屋2を過ぎたところで川2を渡り,北に向きを変えて,鬼峠トンネルの北側から登り始めたのではないか。当時石勝線がなかったことを思えば,自然な道筋であるように思われた。

しかしながら,明治,大正の頃ならともかく,1958年測量の地形図ともなれば,かなりの精度を保持しているはずである。仮説として踏査したルートの地形図上の位置からの外れ具合は,地形図の不確かさの域を超えているように思われる。

入口の探索に1時間半を要してしまった。しかも,結論は出ず。この先が思いやられる。

E地点でふるさと林道鬼峠線に合流した。


2. 成果ゼロ