[ 館内ご案内 ] [ 地 図 ] ニニウのこれから 北海観光節

送電線

●電気の大動脈もニニウを通る

ニニウが山奥の中の山奥にあるにもかかわらず,人間の爪あとが感じられることの要因の一つに高圧送電線がある。ニニウではどこにいても,裸になった山肌が一直線に続き,電線が西から東へと通過しているのがわかる。

*参考資料

ほくでんのホームページ主な電力設備分布図
http://www.hepco.co.jp/company/setsubi/stb_2.html

北海道の脊梁山脈を横断している送電線は3本しかないが,そのうち実に2本がニニウを通過している。

ニニウに電灯がともったのは昭和41年。道内でも電化の遅さでは屈指の地区である。そこに今は北海道の電気の大動脈が2本も通っている。

人が去ってから敷かれたレール,人が去ってから建てられた送電線の鉄塔,そして今ニニウに建設されようとしている,北海道横断自動車道。なにか因縁めいたものを感じざるを得ない。ニニウの開拓者たちは先見の明がありすぎたのか。道路さえあれば,鉄道さえあれば…。しかし彼らの生きているうちにはまともな道路も鉄道も電気も来なかった。いま,誰もいなくなったニニウに鉄道,道路,電気の大幹線が通過しているのである。

送電線はどうやって張るのか
 送電線はニニウの人が苦労した鬼峠を越えている。しかし,車も馬も通れぬ鬼峠にどうやって送電線の鉄塔を通したのであろうか。
 鉄塔から鉄塔へ電線を渡すのには小型のヘリコプターを使うと聞いたことがある。しかし,鉄塔の資材自体はどうやって運ぶのだろうか。上の写真の山もそうだが,車が入れるようなところではない。鉄骨はヘリコプターで運べる量だろうか。コンクリートは? 水は? 工作機械は? なんとも不思議でNHKのクイズ日本人の質問に出してみようかと思っている。
 いずれにしても地質調査,測量,道路工事,ダム建設,など山奥に入る仕事の中でも送電線の建設は最も過酷な作業なのではないだろうか。アウトドアの達人の頂点は送電線建設の作業員なのかもしれない。

●電気に支えられた現代生活

送電線が通る道筋は安全のため一定幅で一直線に木が切り倒される。送電線は尾根を通るから植生は容易に復活しない。送電線左右で生態系は分離される。送電線はすさまじい自然破壊である。

私たちが毎日使っている電気は,こんな山奥の自然をも犠牲にして発電所から家まで届けられているのである。一方でニニウには電気がなかったころの農家の廃屋が残っている。
電気がなくては生きていけない現代生活とその裏で行われている自然破壊。それに対して電気がなくても立派に生活していたニニウの人々の遺産。ニニウでは電気に支えられた人間の生活というものを見つめ直してみてほしい。都会では本を読んだりしなければわからない問題が,ニニウでは実際に目に見える形で直感的にとらえらるのである。

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