北海観光節旅行記小さな旅行記 2004.1.24

釧路湿原の冬 その1(2)

鶴居村に入る。鶴居村はその名のとおりタンチョウのメッカである。

音羽橋

本日の第2タンチョウスポット。

 

雪裡川にかかる道道阿寒標茶線の橋。車道の橋とは別に立派な人道橋があり,早朝にはカメラマンがずらりと並ぶという。雪裡川はタンチョウのねぐらになっているからである。川の中なら天敵に襲われることもなく,水温は気温よりも高いので,タンチョウは川の中で寝るのだ。

鶴見台

本日の第3タンチョウスポット。


釧路から鶴居へ向かう道道沿いにあり,何度となく訪れている場所である。冬の昼間は常時タンチョウが滞在している。


川湯温泉からの路線バスが鶴見台の停留所に到着。2名の観光客が降りた。バスの塗装もタンチョウをデザインしている。

カメラマンが列を作る。観光バスも多く立ち寄り,いちばん活気のあるタンチョウスポットである。ここはもともと下雪裡小学校のあった場所で,先生と子供たちが給餌活動を始め,小学校の廃校後は渡部トメさんが給餌を引き継いでいる。渡部トメさんは紅白歌合戦の審査員になったり,NHKの方言の番組に出たりと大変有名な方である。


百数十羽のタンチョウ。

タンチョウは夏と冬で生活場所を若干移動するが,基本的に1年中釧路周辺に住んでいる。夏は湿原の奥深くで暮らしているのでめったに人里に姿を見せない。一方,冬は完全に餌を人間に頼っており,人間が給餌を行わなければ絶滅しかねないというのが実情である。

食堂せつり

 

鶴居で食事をするならここがいちばんいいと思っている。いにかも北海道的な大衆食堂でありながら,鶴居第一の食堂として要人を迎えるに足る格を兼ね備えている。そばは畑で育てるところから自前でやっているというこだわりよう。しかしわたしはいつも丼物を頼む。今日は豚丼650円。山椒がたっぷりかかっており美味だった。近くのHOTEL TAITOの豚丼もうまいというがまだ食べたことがない。

鶴居・伊藤サンクチュアリ

本日の第4タンチョウスポット。ここは日本野鳥の会が給餌・調査研究活動を行っているところで「残したい日本の音風景100選」に選定されている。

鶴居役場前から1kmほど東へ行ったところにある。


こちらもカメラマン多数。ピリピリと張り詰めた雰囲気だった。


タンチョウの数は鶴見台と同じくらい。

タンチョウは江戸時代には道南や東北にもいたというが,明治以降,耕地の拡大と乱獲により生息数が激減し,大正時代には既に絶滅したと言われるまでになった。その後,禁猟区の指定や,天然記念物の指定など保護運動の兆しが見えはじめるが,昭和27年に吹雪が続いて餌不足になった中で給餌に成功したことがきっかけで,積極的な保護が始まり,以降急激に数を増やしていった。昭和27年のセンサスでは33羽だったのが現在では約800羽にまで増加している。

民宿つるい

「北海道いい旅研究室」でも紹介された民宿鶴乃家であるが,昨年の春から何の前触れもなく営業を取りやめた。わたしの知り合いにも行こうと思っていて入りそびれた人がおり,夢でもいいから復活してくれないかと思っていたそうである。それが秋になって突然民宿つるいと名前を変えて再開し,人々を驚かせた。地元の企業が経営を引き継いだらしい。

 

玄関には新しく入浴券の自動販売機が置かれ,スタンプカードを発行するなどやる気が感じられる。建物はほとんどそのままだが,細かい部分でかなり補修が入っていた。脱衣室,浴場は以前にも増して清潔感があふれていた。浴槽は5尺×6尺ほどのステンレスの牛乳用の水槽で,源泉がなみなみと注がれ溢れるままになっている。泉質は黄色のモール泉で,飲んでのおいしさは釧路管内随一だ。これほどの温泉が町のど真ん中にあるというところは全国でも他にそうないだろう。にもかかわらず相変わらず空いていて,今日もわたし一人だったのが気がかりではある。

(←参考,民宿鶴乃家,2002.3.30撮影)

茂雪裡

国道274号線沿いに茂雪裡市街を見渡す絶景スポットがある。写真左手に最近ひそかなブームを呼んでいる茂雪裡小学校が見える。現在の児童数5人で,この3月で廃校になることが決まっている。


鶴居や阿寒の農道は通行止めのゲートもなく,雪が降れば自然に通行止めとなる。

阿寒町に入る。


国道274号。1月14日〜15日の大雪では通行止めとなったが,きれいに除雪されて舗装面が出ていた。地図を見ればわかるが,ほとんど通る車のない道路である。


国道274号は国道240号に出る直前の約2kmが未開通で,町道を迂回する。町道に入るといきなりこのように除雪状況が悪くなる。阿寒町は釧路管内でもとりわけ財政状況が悪く,除雪もままならないようである。


再び国道274号。歩道まできれいに除雪されている。こういうめったに通る車のない道の除雪に労力を注ぐなら,もっと住宅街の除雪をきちんとしてもらいたいものだが,そこはやはり役所,開発は国道しか,土現は道道しか,役場は町道しか除雪しないのである。

阿寒国際ツルセンター・グルス

本日の最終タンチョウスポット。


道の駅阿寒ランド丹頂の里。釧路から阿寒湖への国道沿いにあり,観光バスで賑わっている。

国際ツルセンターは道の駅の建物の100mほど奥にある。実は入館するのは今日が初めてである。

この施設は阿寒町教育委員会の所管で,タンチョウの研究者が2人勤めているという。阿寒町には他にマリモの研究で高名な方もいるし,懐事情が厳しくてもそういう研究に力を入れるというのは立派だと思う。


ここは入館料400円を取られる。言うまでもないが,タンチョウは漢字で書くと丹頂で,頭が赤いという意味である。道の駅の向かいになる温泉施設「赤いベレー」は丹頂を言い換えたもの。英語で鶴はCrane(クレイン)で,学名はGrus(グルス)。


分館・タンチョウ観察センター。国際ツルセンターではゲージでタンチョウを飼育しており,一年中タンチョウを見られるようだが,野生のタンチョウはこの分館から観察することができる。


鶴見台と同じくらいの数のタンチョウがいた。


国際ツルセンター。タンチョウに関する展示は釧路管内,というか世界随一であり,大変勉強になった。タンチョウ観察の際はまずここで勉強しておくとより楽しくなると思う。

 

最後に釧路市の丹頂鶴自然公園に行こうと思っていたが,遅くなったので断念した。

 

今日は5箇所のタンチョウスポットを巡ってきたが,写真が悪く魅力を十分にお伝えできないのが残念である。タンチョウの観察場所からタンチョウがいる場所までは少し離れており,タンチョウの表情まで追うには相当の望遠レンズが必要である。また,道路の上をタンチョウが群れをなして横切っていく様子を何度も目にし,それはそれは美しいものであるが,デジカメはそういう瞬間を捉えるのには弱い。また「残したい日本の音風景100選」にも選ばれているようにタンチョウの鳴き声も何ともいえぬ品があるものである。

道東はこれから流氷の季節となり,冬の観光シーズンが到来する。タンチョウも2月になると交尾の季節となり,給餌場はさらに活気を増す。ぜひとも多くの方々にタンチョウを見に来ていただきたいものである。

北海観光節旅行記小さな旅行記 2004.1.24