北海観光節小さな旅行記ラベンダーイーストと裏富良野

上富良野駅弁

学田10:04発→上富良野10:22着 富良野線旭川行き普通列車

ぶどう果汁工場から学田駅までは歩いてすぐだ。ここから上富良野駅まで引き返す。

上富良野駅到着。私の地元の駅で,高校時代はこの駅から3年間汽車通した。

今月,上富良野駅に駅弁が登場した。上富良野駅開業109年目にして始めての駅弁で,私もまさか廃れる一方の上富良野に駅弁が登場するとは夢にも思っていなかった。

駅弁は今月7日から販売を開始し,初日は用意した200食が飛ぶように売れて3時間で完売したという。午前10時半から午後1時半までの販売だというので,念には念を入れて,10時半直前に到着する列車で訪れて入手を確実にすることにした。

10時25分,調整元の松屋製パンから駅弁が届いた。昨年までソフトクリームを売っていた売店の奥さんも,今年は駅弁屋さんに変身だ。かつてこの場所にはキヨスクがあったことを思うと,感慨深いものがある。

松屋製パンというと我々にとっては高田幼稚園の給食でなじみ深い。小学校に入ると町の給食センターからの配給になったが,ご飯は茶色く団子になっており,おかずも腐乱臭がするひどくまずいものだった。ちょうど小学校に入った年に「おしん」が放送されていたが,おしんの食べていたダイコンメシを見て,我々はむしろうらやましく思ったものである。

しかし,松屋製パンから配給を受けていた高田幼稚園の給食には,そういう忌まわしい思い出は一切ない。

 

駅弁は「かみふらのポーク豚丼」「かみふらのポークとんかつ弁当」「かみふらのポークとんとろ丼」「かみふらのポークとんかつサンド」の4種類で,いずれも地場産の豚肉を主にしたものである。白米には上富良野産米のブランドである「紫苑」を使っている。

待合室で食べるのも恥ずかしいので,駅裏の公園に行ってテーブルで弁当を広げた。

 

4種類もあったので迷ったが,今日はこのあとだいぶん歩くので,とんかつ弁当にした。本物の木の弁当箱を使っているのはよいと思った。

ただ,駅弁といっても正式な駅弁マーク入りの駅弁ではなく,老舗の駅弁屋の弁当に比べると洗練されていない部分も多い。

まず,掛け紙のデザインが悪い。安直にカラー写真を使わないで,単色かせいぜい3色刷で,SLのシルエットを入れるなどしたほうがよい。

ひもは片手で解けるような結び方がよい。

ラップは列車の中では開けるのがやっかいなのでないほうがよい。

小さく折り畳んだ駅弁用の紙おしぼりが入っているとよい。

調整年月日はシールではなくハンコがよい。

「食べ終わったら車内のくずかごへ」など旅情を醸し出す一文が添えてあるとよい。

と,欲を言えばきりがないが,販売側としてはまず素材で勝負といったところなのだろう。ただ,駅弁の場合マニアが多いので,ある程度マニアに受けることを考えた方が得策だとは思う。

  

11時過ぎに旭川からノロッコ号が到着する。上富良野駅では掛札式の改札案内が残っており,発車時刻が過ぎてもまだ列車に乗ろうとする人がいることを乗務員に伝える電鈴も現役である。かつてどこでもみられた風景だか,これほど国鉄時代そのままの駅は,北海道ではほかにないのではないだろうか。そういう事実を知らずに,単に駅舎が古いからというだけで建て替えを望む町民が多いのは残念なことである。

ノロッコ号到着。今年は運行10周年を記念するヘッドマークをつけていた。

 

売り子さんは3両編成の列車の両端から中央に向かって歩き,2人出会ったところで動きが止まってしまった。結局売れたのは1個だけだった。

森のいかめしほどの知名度になれば,ほとんど廃人のような売り子を雇っても,飛ぶように売れているという例もあるが,無名の駅弁を売るにはともかく乗客に気づかせることが必要である。

この道一筋何十年という駅弁の売り子さんを見ていると,姿勢を正して声を張り上げ,とにかく何度も列車の脇を行ったり来たりするのがコツのようである。もしかしたらJRのほうから運行の妨げにならないようにとお達しがあるのかもしれないが,売り子さんの頑張り方によってはもっと売れるように思われた。

それと,2,3分の停車時間で個数を売るには,弁当の種類を1種類に絞らないと買う方も迷ってしまうのでいけない。

牛肉や鶏肉を名物にした駅弁は全国に多いものの,豚肉を売りにした駅弁は非常に珍しいので,なんとかヒットしてくれればと思う。

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