北海観光節小さな旅行記滝上の7つの体験

林鉄本流線

旭川駅前9:15発→滝西11:18着 北海道中央バス 流氷もんべつ号

 

ツアーは札幌発着だったが,現地集合も可能だった。ちょうど,紋別行きの高速バスに乗れば間に合う時間だったので,バスで滝上に向かう。

このバスは,中央バスの札幌・旭川線の始発便を兼ねており,旭川到着時点で10分遅れていた。

旭川からは国道39号線を走り,上川のバスターミナルで小休止。上川発車時点で18分遅れとなった。

運転手さんには,遅れは回復しないと思われるので,もし迎えの人があるならメールで知らせておいたほうがよいと勧められた。いきなりメールでと言われたのには時代を感じた。たしかにいまどき公衆電話の場所などを教えられても逆に戸惑ってしまうかもしれない。

上川発車後,高規格幹線道路の旭川紋別道に入った。

浮島峠付近に差し掛かると,雪景色となってきた。

浮島トンネルを出てすぐにある浮島トンネル記念公園の跡。キャンプ場は閉鎖されたが,円筒型が印象的なロッジ273は残っていた。

峠を越えてから延々10kmくらい走ってようやく出会った廃屋。このあたりは,昭和59年に浮島トンネルが開通する前は道内有数の奥地だった。以前に比べるとかなり廃屋が少なくなり,畑も自然に還りつつあるが,それでも廃屋街道と呼ぶにふさわしい風景がしばらく続いた。

滝上町に入って最初の商店「山田商店」。付近はかつて奥滝上駅逓所や滝奥小学校があった小集落であるが,人はあまり住んでいないように見えた。

滝西停留所でバスを降車。現地集合の場合は「道の駅たきのうえに12時集合」とあったのだが,現地集合の客は私のみということで,最初の目的地に近い滝西で降りるよう指示されていた。

滝西集落の入口。ここにはまだ小学校が残っている。集落はすぐそこにあるはずだが,林にさえぎられて見えない。この林を越えると,何か童話に出てくるような素敵な集落が待っているような気がする。滝上は「童話村」を名乗っているが,たしかに童話的な雰囲気を持った山村だと思う。

 

国道沿いにあった商店。店先では野菜のタネを売っていた。この手のタネというのは農家が買うものではなく,もっぱら家庭菜園向けである。恐らくこの集落の人たちは家庭で野菜などつくりながら,それなりに豊かな暮らしをしているのだと思う。

滝上町観光協会のhatta氏がにこやかに迎えてくれた。

今回のツアーは滝上町観光協会の全面的な協力のもとで実施されているようである。

バスに乗り込むと,いきなりビデオカメラで撮影された。観光協会がどこかの映像制作会社に記録映像の撮影を頼んだのかと思ったら,札幌テレビ放送の取材だと聞いて驚いた。

一般の参加者は私を含めて4名だった。ツアー会社が2名,運転手1名,地元の人が4名で,関係者のほうが多く,これで最少催行人員10名に達したと言えるのかどうか微妙だが,STVの取材が入るということでツアーを決行したようである。

HKワークスでは,「地旅」と称する,その地域で活動する魅力的な“達人”を見つけてガイドをしてもらうというツアーや,地元の歴史や文化を少人数で見て回るツアーを企画している。「達人に出会う旅」シリーズは今回で第24弾になるという。私もその存在をあまり認識していなかったが,昨年の10月に開催されて,誰が参加するのかと不思議に思っていた「北炭送電線をたどる」ツアーを実施していたのがHKワークスだった。

バスに乗ってまず案内があったのが,車窓左手にあった山。兜山(かぶとやま)と呼ばれて,地元では親しまれているという。

バスは茂瀬軽橋の脇から国道を東に外れ,桜並木の道に入った。これが森林鉄道の跡だという。

たしかにこれは鉄道の跡っぽい。桜並木がきれいだが,まず誰も通らないであろう道である。

「ミリオン道路地図帖」(東京地図出版,1966.3)

滝上にはかつて,渚滑(濁川)森林鉄道という木材を搬出するための鉄道があった。森林鉄道の敷設主体には国有林,御料林,道有林,東大演習林,王子製紙,三井物産などがあり,明治40年代から昭和20年代にかけて道内各地に建設され,総延長は1,000km以上に及んだと言われる。

渚滑(濁川)森林鉄道は国有林の官行斫伐のために建設され,国鉄渚滑線濁川駅を接続駅とし,渚滑川沿いの本流線とオシラネップ川沿いのオシラ線からなっていた。昭和10年に建設に着手し,昭和34年までに廃止されている。最長時の延長は65.6kmで,これは武利,温根湯,置戸,十勝上川(屈足),古丹別に次ぐ規模であった(「北海道の文化74」,北海道文化財保護協会,2002.3)。このほか,地図には載っていないが,いくつもの支線が奥地へ延びていたという。

バスはいったん国道に出て,ヒジの沢林道に入った。上の地図で「本流」と書かれているところで,この林道の最初のほうは,国道273号の旧道のようである。

旧道の築堤上でバスは停車し,ここで下車見学となった。

説明してくださるのは「滝上森林鉄道を調べる会」の主宰,竹内正美さん。同会は平成23年3月8日に発足したばかりで,一般町民,役場,観光協会,森林管理局職員など11名が参加しているという。昨年11月6日には北見のふるさと銀河線沿線応援ネットワークとタイアップし「オホーツクの鉄道遺産・近代化&産業遺産を訪ねるセミナー」を開催,濁川森林鉄道をバスで巡るツアーとしては今回が2回目になるという。

 

15線ヒジの沢鉄橋跡。昭和10年ごろの建設で,鉄筋コンクリートのスリムな橋脚が印象的である。

次へ