北海観光節小さな旅行記森と生きるin占冠

森と生きるin占冠 その5

 

ホタテを差し入れてくださった猿払イトウの会の小山内会長による一丁締めで,20時10分,交流会の1次会が終了した。

2次会は1次会場の下階にある,いまは営業していないバー「ラ・ルージュ」。ペンションイング・トマムの夏井さんは,24年ぶりにこのバーに入ったとかで,いたく感動されていた。

2次会からの参加者も加わり,濃厚な話に花が咲く。

私の両サイドでは,ひょんなことから根釧台地の昔話で盛り上がった。別海駅がまだ西別と呼ばれていた頃,市街地にあった美容室が独身者のたまり場になっていて,中標津,計根別など各方面から,その頃まだ乗用車がなかったので,トラックに乗って若者たちが集ったという。メンバーは,国鉄職員,獣医,電電公社の交換手,役場の職員,保健婦,学校の先生など。カラオケのない時代だったから,生バンドでそのころ流行していた霧の摩周湖や,自作の曲を歌ったという。

昔といっても,40数年前の話であるが,普段使われていないバーの中という雰囲気も相まって,夢見心地の気分であった。

私から見て,左手にはトマムリゾートの現役従業員,OBがずらりと囲んでいた。トマムもバブルの頃には新規採用が200人という年が3年続いたこともあったというが,会社が変わってもこうして占冠に住み続けているのは,本当に占冠が好きな人たちである。

山本さんがいつもおっしゃるのは,リゾート中で働いている人たちにとっては,ここが生活の場だということである。トマムという閉鎖された空間の中で自分たちは何なのだろうかと自問自答していく中で,森があってのトマムだと気が付いたのだという。そして,リゾートの中から,いちばん最初に森の中に踏み出していった人たちが,いま占冠に根付いて新しい文化を創り出している。

私などトマムリゾートには何にも関係ない人間が,この場に居合わせて,トマム草創期の物語を聞けるというのは,何とも幸せなことである。

リゾートには都会から来た従業員のほかに,地元の農家の人たちもアルバイトで来ていたという。リゾートが開業したころ,トマムはまだ電気が通って20年ほどしか経っていなかった。そういう中で生きてきた人たちというのは,自分たちで何でもやってしまう。何でもまずは自分でやってみて,どうしてもできなかったときに最後にお金を使うというやり方は,都会から従業員にとってカルチャーショックだったという。

そんな話を聞いていた山脇先生も,いまはお金が手段ではなく目的になってしまって,お金で何をしたいのかわからなくなるという落とし穴にはまっているのではないかとおっしゃっていた。ロシアではルーブルが下落し税が極端に上がったとき,貨幣経済から税金のかからない物々交換に変わったという話も聞いた。

最近,「半農半X」による新しい地域づくりというようなことを考えてきたが,話を聞いていて,実は半農半Xも都会からの発想なのではないかと思った。半農の「農」は貨幣経済によらず自分で賄うという意味での農,X(エックス)は,お金を得るための仕事で,「半農」力を高めることによってできるだけお金を使わずに生活するということであるが,これはやはり都会の発想である。本来の農というものは,「できるだけお金を使わない」のではなく,そもそもお金を使うという発想がなかったのである。


22時をまわって,あらためて一人ずつ自己紹介を行った。1時間ほどをかけて一巡した。

最後は,イングトマムの夏井さんオリジナルの雲海予報を聞き,23時,2次会は解散となった。

その後,残った食べ物や飲み物を幹事部屋へ運び,さらに3次会へと進んだようであるが,私は2次会で引き上げた。

2012年9月30日(日)

明けて9月30日,部屋のテレビをつけると「本日,山頂悪天候の為,ゴンドラ&雲海テラスの営業を中止させていただきます。ご了承ください」と表示されていた。

窓から外を見ると,悪天候というほどには感じられなかったが,雷注意報が出ていたらしい。

雲海テラスは今年6月に上ったので,今日もまたいまいちならどうしようかと迷っていたが,営業中止ということでかえってすっきりした。ただ,雲海を見る目的で今日トマムに来た人たちにとっては残念な結果だったろう。

朝食はゆっくりといただけることになった。今日はニニヌプリが修学旅行生専用となっており,一般向けに営業しているのは,halと三角だった。

初めて三角で食事をしてみることにした。

教会のような荘厳な階段を下りていくと,意外にも広々とした空間があった。

和食のバイキング。

お茶漬けが名物のようだったが,腹八分目が健康的と思い,白米ごはん1杯に留めた。

売店も朝の7時から営業している。

昨年の交流会場となったユックユック。最近さらにメニューが充実したと聞いた。

 

「とまたつ」の第8号は「水の教会」の特集だった。毎日21時から21時30分まで見学時間を設けているという。外観しか見たことがないので,今度は中も見てみたい。

11月23日には,ニニヌプリを会場に薪能が行われる。既にチケットを取ってあるが,これも楽しみである。

昨日のセミナーの様子は,さっそく北海道新聞に掲載されていた。

8時ちょうど,村のバスでトマムを出発する。

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