礼文路

澄海岬

浜中から西上泊に向う。鮑古丹や鉄府という集落にも興味があったが時間の関係で通過した。

このあたりは「4時間コース」に指定されている。宗谷丘陵に似た景色だ。そういえば礼文には木がない。山火事で焼けてしまったのか,鰊を炊くのに木を切り尽くしてしまったのか,風が強いからもともと木がないのか。たしかに花には恵まれているが自然が豊かという感じはあまりない。俗に原生花園と呼ばれるところが北海道には何か所かあるが,それらも本来の自然ではなく,人間が木を切ってしまった跡にできた草原にたまたま野の花の群落が形成されたものである。

詩人・更科源蔵は『北海道の旅』(1960,現代教養文庫)の中で礼文についてこう書いている。

「利尻島は島全体が山でできているようなのに,隣の島礼文島は,山らしい山もない静かな姿の島である。利尻島の型が円いのに対して,この島は細長くて,よく乾鱈の型をしているなどといわれていて,あらゆる点で対照的であるが,一つだけ似ているのは,どっちの島にも蛇も兎もいないということだ。」

Sさんもこの島には動物(けもの)がいないと言った。熊さんも鹿さんもいない。礼文はキツネを介する伝染病エキノコックスの発祥地でもあるが,その際にいくつかの動物が撲滅させられたらしい。礼文で見たケモノといえば猫さんくらいだ。

澄海(すかい)岬


西上泊(にしうえどまり)の駐車場。観光バスもやってくる観光地。

礼文の海は透明度が高いといわれるが,それがいちばん感じられるのがここ。岬から見下ろすと,青く透き通った水に白い海の底が映えて美しい。沖縄の海のようでもある。

西上泊の集落。秘境の中の秘境と称されるが,たしかに地図で見るとすごいところにある。この集落に学校はないが,冬はどうやって通学しているのだろうか。


花もたくさん咲いていた。


"ニシウエン トマリ トイレ" 仰々しい名前のトイレだが,いたって普通のトイレだった。

西上泊から先,「8時間コース」はいよいよ車道の通じていない西海岸へと踏み込んでいく。礼文を観光する人はみんな「8時間コース」に挑戦するのかと思ったがそうではないらしい。やはり一般的な観光客は観光バスで行けるところだけ行って島を去っていくのだ。たまたま話をした観光ハイヤーの運転手さんは,8時間コースを歩くのは「ユースのねーちゃん」くらいだと言っていた。Sさんもまだ歩いたことがないそうだ。

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