三陸初日の出の旅

ほっとゆだ

岩手県にはなるべく長くいたい。盛岡は17時50分に出ればよい。

観光するといっても元旦だからどこも閉まっている。やっぱり温泉だ。しかし,日帰り入浴施設は休みかもしれない。

勇気を出して電話してみた。

「はい,ほっとゆだです。」

電話の向こうから岩手弁のなんともいえぬ温かみのある声が聞こえてきた。電話とはすごいものだ。遠く離れた土地の人と直接話ができるのである。インターネットの場合は遠いところの人と話しているという実感はどうも沸いてこない。

ほんとはほっとゆだは押さえのつもりで,もしほっとゆだが営業していたら,次に穴ゆっこに電話をかけてみようと思ったのだが,そのおばさんの声を聞いた瞬間,ほっとゆだに行くことに決めた。

意外に思われるかもしれないが,この時間にほっどゆだに行くとすると,北上から入るより,大曲を通ってぐるっと回っていったほうが早く着く。


盛岡駅で駅弁を買う。遠野物語を読んだらやっぱりはやちねの里だ。駅弁屋さんも元旦からご苦労様。

10時50分発秋田新幹線こまち5号に乗車。いわてホリデーパスは特急券を別に買えば新幹線にも乗れる。青春18きっぷには無いメリット。


自由席は満員だった。盛岡−角館間は今回の旅行で唯一の初乗り区間である。しかし何も見えなかった。


11時45分大曲


12時15分横手発北上行普通列車

12時48分ほっとゆだ

鉄道マニアの比率が高い。10000円で元旦JR東日本乗り放題の正月得割きっぷを利用してきたのだろう。たしかに元旦からこんなところを旅行しようと思うのはマニアくらいだろう。

温泉は結構混んでいた。受付でお金を払うとみかんを一つくれた。

温泉自体はあっさりした泉質で,かけ流しにはなっておらず本物なのかどうかはいまいちわからない。ただ,シャワーのお湯まで温泉を使っているのは素晴らしい。旅の人には十分熱かったが,地元の人はぬるいと怒っていた。わたしとしてはゆだ錦秋湖駅の穴ゆっこほうが好きだ。


14時36分発北上行き列車を待つ。べたべたの雪が降ってきた。今日は盛岡を出て以来,ダイヤが乱れ気味である。保線の人が心配そうに見ている。元旦からご苦労様だ。

ゆだ錦秋湖駅からは家族連れが乗ってきた。穴ゆっこも営業していたらしい。「今日はじめての客だったんじゃないか」「洞窟風呂は期待ばずれだった」など,さんざん文句を言っている。それでいながら楽しそうだった。そこが穴ゆっこのいいところ。わたしも穴ゆっこに行けばよかった。

北上までの道中,1ヶ月ぶりに携帯電話が鳴った。だれだ? もしかして・・・・・・・。


15時20分北上着。さっき来た携帯電話の番号にかけてみる。宮古に帰省中の友人だった。
「わたしゃもう北上に来てしまったよ」
惜しいことをした。でもまあ,この電話をもらっただけで今回の旅行は価値があったと思う。


16時31分盛岡到着。駅前の盛楼閣に入る。ここは一人で入るには申し訳ないような店だが,ガイドブックにも紹介されているので同類の人たちの姿も多い。
わたしは県でいえば岩手が好きだが,国でいえば韓国が好きである。韓国の女性はみんなきれいに見えるし,韓国の料理なら何でもうまいと思う。冷麺は盛岡の名物である。岩手で韓国の料理が食べられるのだから,これほど素晴らしいことはない。
3月に来たとき冷麺の中辛を頼んでぜんぜん辛くなかったので,いちばん辛いのを頼んでみようかと思ったが,冬期限定で「温麺」というのがあったのでそれにした。ウーメンというのかオンミョンというのかわからないので「これください」とメニューを指さして頼んだが,オンメンと読むらしい。
その温麺が完成された味とでもいうべきもので,素晴らしくおいしかった。

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