北海観光節旅行記釧路発鹿児島ゆき 列島縦断の旅

小本温泉

本八戸駅は八戸市の中心にある駅だが,新幹線の八戸駅とは2駅離れている。新幹線開業の影響はいかがなものかと思ったが,横断幕が掲げられているくらいで,とくにかわり映えはなかった。

青春18きっぷの2回目に改札スタンプを受けて,2日目の旅の始まりだ。

本八戸5:51発→久慈7:51着 普通列車 2両編成1両目 キハ40-563


本八戸駅にて。

八戸線はタブレットが健在である。

種市にて。


宿戸−陸中八木間で日の出を迎える。八戸線は海岸沿いを走るので景色は良い。


手動の転轍機も健在。侍浜にて。


7時51分,久慈到着。

JR八戸線久慈駅 三陸リアス鉄道久慈駅

JRのホームと三陸鉄道のホームは跨線橋でつながっているのだが,乗り換えるためにはいったん駅を出なければならない。

三陸鉄道北リアス線は全線通して乗ると運賃1800円。今日は小本で降りるので久慈−小本(1250円)と小本−宮古(750円)に分けて買うと2000円になってしまう。それで,あまり意味はないが2000円で1日乗り放題のフリー乗車券を買った。

久慈8:03発→小本9:01着 普通列車 1両編成1両目 三陸鉄道36-1106

特急用の座席に取り替えられていた。

北リアス線はトンネルが多くあまり景色は見えないが,たまにハッと驚くような絶景があらわれる。

小本到着。晴れ渡った空が気持ちいい。高架のホーム上は風がすさまじかった。


今日が2度目の小本駅。ここからバスで龍泉洞に行ったことがある。

岩泉30景「小本川水門」。津波対策のため河口に作られた水門。日本最大規模で,地元では「東洋一美しい」と言われているそうだ。

小本温泉 黄金八大龍王の湯

駅から徒歩10分で行けるはずだったが,看板に従って歩いていくと,袋小路に入り込んでしまった。温泉はすぐ目の前に見えているのに,どうやっても前進できない。もうあきらめて帰るしかないかと思ったが,何とか工事現場をすり抜けてたどり着くことができた。

建物に入ると写真で見たことのある社長さんが受付に座っていた。帰りのことが心配なので,
「いま道に迷ってしまったんだけれども,駅へはどっちへいったらいいですか?」
と聞いておいた。

そして入館料を払おうとしたところ,
「いいです,いいです,温泉はいいです,どうぞ。」
と通してくれた。

この小本温泉は「黄金八大龍王の湯」という名前がちょっとうさん臭いが,三陸沿岸では珍しい天然の温泉(冷泉)で,成分が極めて濃く,万病に効く神秘の湯として知られている。それで一度来てみたいと思っていた。
実際なかなか良い温泉だった。源泉の湯は肌にビリビリくるほど濃厚だし,露天風呂もさわやかである。洗い場で地元のお爺さんに何か話しかけられたが,方言がきつくて100%理解できなかった。わたしはただハアハアとうなずくだけだったが,お爺さんはニコニコしていたので別に悪いことは言ってなかったと思う。

脱衣室で着替えて出るとき,ちょうど社長さんがいたので,「どうもありがとうございました」とお礼を言って出て行こうとすると,

「じゃあ,お会計はあちらで」

てっきり,風呂代をただにしてくれたのかと思っていたら,なかなか堅気な人である。

「いや,さっきは掃除中でホコリがすごかったもんだから,先に入ってもらったんで」

まあ,お金を払うのは当然のことなので,「どうもー」と失礼して,玄関の前のベンチで靴ひもを結んでいると,社長さんが車に乗ってどこかへ行くようである。

「駅に行くんなら,乗っていきませんか!」

やっぱりいい人だ。

車の中で,釧路から来たのだというと,大変驚かれ,どうしてここを知ったのかとか聞かれた。温泉稼業はこれからの年末年始が稼ぎ時だと言っていた。商売繁盛をお祈りしたい。「今度は泊まりで来てくださいよ」と言われたので,「また来ます」と約束して駅で降ろしてもらった。


小本駅にお客さん迎えに行くついでがあったようである。こんどはお婆さん2人が温泉に向かっていった。

小本10:11発→宮古10:44着 普通列車 2両編成1両目 三陸鉄道36-1201

小本駅のホームは相変わらず風が強い。そこへ,お爺さんが手に持っていた切符が風に飛ばされて線路に落ちてしまった。しかし,もう向こうに列車は見えている。

ここは,この場に居合わせている唯一の青年であるわたしが,命をかけて線路に飛び込み切符を拾うべきか

と,一瞬迷っているうちに,お爺さんが線路へダイビングしてしまった。
無事着地して,切符を拾えたのはいいが,今度はホームに上がれなくなってしまった。

わたしと居合わせたおばさんで脇を抱えてエイヤ−と引き上げ,九死に一生を得たのである。

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