北海観光節旅行記東京クリスマス

天妙国寺

2004年12月23日(木)


岩泉上空通過。


飛行機は空いていた。


羽田空港到着。

着陸したとき乗務員さんから機内放送があった。

「街の中はクリスマスのイルミネーションが華やいでおります。皆さまどうぞよい休日をお過ごしください」

はい,楽しんできますとも。

 
お昼時なので到着ロビーで簡単に昼食を済ましてしまう。


京浜急行電鉄に乗車。


羽田空港駅から12駅目の青物横丁駅で下車。

青物横丁

 
青物横丁というのは味わい深い駅名だが,駅前の商店街も名前から受ける印象どおりの雰囲気だった。


さらに細い道に入る。北海道発祥のツルハドラックもこの街になじんでいた。

天妙国寺


本日の第一目的地に到着。このお寺は有名人のお墓があることで知られている。

桃中軒雲右衛門の墓

「浪花節だよ人生は」というが,浪花節とはいったい何なのか。ずっと疑問に思ってきたが,浪花節=浪曲だということを最近知った。昭和の始めごろまで浪曲は浪花節と呼ばれ,諸芸の王とされていたのである。

花は桜木 山なら富士よ 浪花ぶしなら桃中軒
作詞:藤田まさと 作編曲:長津義司 歌:三波春夫「桃中軒雲右エ門」より

桃中軒雲右衛門(とうちゅうけんくもえもん,1872〜1916)は後に浪聖とも呼ばれた浪花節の巨匠である。私も浪曲は好きで学生の頃からよく聴いていたが,語りもさることながら,舞台の造形美に惹かれたのである。富士山を思わせるような広く裾を引いたテーブル掛けに,舞台両側に置かれた松の盆栽と金屏風。この舞台演出を創案したのが雲右衛門なのだという。

雲右衛門は明治の末に忠臣蔵の義士伝を14席吹き込んでいるが,そのうち「中山安兵衛生立ち」と「南部坂後室雪の別れ」がCDに復刻されている。日本初の両面盤SPレコードへの吹込みであり,それぞれ2枚裏表,12分あまりの物語となっている。

音丸さんの墓

さて,昭和3年になると電気吹き込み式のレコードが発売され,音質が格段に向上したことによって歌謡曲が台頭し,東海林太郎,藤山一郎らの流行歌手が登場する。私もそんなに多くの歌手を知っているわけではないが,現段階での一つの結論は音丸さん(おとまる,1906〜1976)である。

横浜の放送ライブラリーに,昭和44年12月31日に放送された「なつかしの歌声・第2回年忘れ大行進(テレビ東京)」という番組が保存されている。昨年の11月18日,それを見に行った。

出演は,藤山一郎,淡谷のり子,二葉あき子,ディック・ミネ,灰田勝彦,渡辺はま子,霧島昇,岡晴夫,小唄勝太郎,赤坂小梅,市丸,小畑実,高田浩吉,音丸,美ち奴,東海林太郎,並木路子,竹山逸郎,平野愛子,久保幸江,奈良光枝,池真理子,藤原亮子,岡本敦郎,コロムビア・ローズ,菅原都々子,織井茂子,近江俊郎,林伊佐緒,塩まさる,伊藤久男,菊池章子,松島詩子,服部富子,という方々であった。

その中でひときわ印象に残ったのが音丸さんだった。市丸さん,勝太郎さん,小梅さんらが往年の芸者スタイルそのままで歌っていたのに対し,音丸さんは年齢相応の美しい着物姿で情緒たっぷりに「船頭可愛や」「博多夜船」を歌い上げていた。

ちょうど1年前の昨年12月23日,大阪通天閣近くの「音楽の店ナニワ」というレコード店で「懐かしの歌声名曲集〜音丸*船頭可愛や」というCDを購入した。これは昭和47年,音丸さん66歳のときに往年のヒット曲をLP一枚分吹き込んだもので,それまで聴いたことのないような心地のよい歌の数々であった。その後購入した「SP盤復刻による懐かしのメロディ〜音丸・船頭可愛や」と聴き比べてみると,発売から40年近くを経て吹き込まれたものであるにもかかわらず,節回しなどまったく変わっていない。音丸さんの場合,才能に任せて勢いで歌うのではなく,よく稽古をして丁寧に歌っているのがわかる。

昭和22年,美空ひばりが高知県大豊町でバス事故に遭い,1ヵ月半の重傷を負ったという有名な話があるが,実はこれは音丸一座の巡業中の出来事で,当時10歳の美空ひばりは音丸公演の前座を務めていたのである。そうした縁もあってか,後年美空ひばりは「船頭可愛や」「博多夜船」をレコードに吹き込んでいるが,節回しの丁寧さでは音丸さんにかなわない。

雲右衛門の墓を通り過ぎ,本堂の裏手に音丸さんの墓がある。「永井家之墓」とあるのがそれである。

 

墓石の脇に船の帆を思わせる形をした碑があり,「船頭可愛や」の歌詞が音丸さんの達筆そのままに彫られている。これは本人の意思で生前に建てられたものだという。

「船頭可愛や」は作曲家古関裕而の初のヒット作としても知られ,日本歌謡曲史上最高傑作と評価する人もいるが,私もまったくそのように思う。

「船頭可愛や」の詩を唱えてお経に代える。

夢もぬれましょ 汐風夜風
船頭可愛や エー 船頭可愛や 波まくら

千里はなりょと 思いは一つ
おなじ夜空の エー おなじ夜空の 月を見る

独りなりゃこそ 枕もぬれる
せめて見せたや エー せめて見せたや わが夢を
作詞:高橋掬太郎 作曲:古関裕而 唄:音丸 「船頭可愛や」

 

なお,上に登場した雲右衛門と音丸さんのCDは新星堂のサイトから試聴できる(タイトル(音楽)=浪花節ライバル対決,または,アーティスト=音丸で検索)。


この辺はお寺が多い。隣のお寺では何かを焼いていた。


このような行列がやってきて,天妙国寺の境内を一周していった。志村けんのだいじょぶだ教にそっくりである。

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