北海観光節旅行記クリスマス三都物語

シネマ太陽

松風町で下車。

こんな日に一人で繁華街を歩いていると,やたらと客引きに声をかけられる。

 

ぶんぶく茶釜というラーメン屋で,大魔王みそラーメンという全然辛くない激辛ラーメンを夕食とする。

クリスマスはケンタッキー,今夜は商売繁盛だ。私にとってケンタッキーは憧れの存在だった。

子供の頃,私は比較的古い考え方の家で育った。食事と言えば,ご飯にみそ汁,漬け物,蕗の煮付けに秋刀魚の焼いたのなどで,およそカタカナの名前が付く料理など食べることはなかった。

小学校6年生のときのこと。家庭科でサラダを作る実習のとき,シーチキンを入れることになった。私はシーチキンがどんなものか知らなかった。先生に尋ねると「絶対食べたことあるはずだよ。帰ったらお母さんに聞いてごらん」と言われた。

帰って早速,母に尋ねる。

「母ちゃん,うちではシーチキン食べたことないよね」

「うん,あなたには食べさせたことなかったわね」

そんなことだから,ケンタッキーのフライドチキンなどまるで手の届かない夢の食べ物だった。祖母の病院通いについて旭川に行ったとき,ケンタッキーの袋を下げている同年代の子どもを見たが,祖母にケンタッキーに連れて行ってなどと頼めるはずはなかった。当時,親戚でただ一人札幌に住まいだったハイカラな大叔母が,「昔はみんなでケンタッキーを食べたものよ」なんて話しているのを聞いて,さすが札幌は違うと思ったものだ。

シネマ太陽

 

函館は意外なことに大手のシネコンが進出していない。パチンコ屋の上にあるシネマ太陽と在来の東宝が頑張っている。

結局,今日の興行はほとんど満席にはならなかったようだ。

がら空きの劇場。クリスマスにはみんな映画を見ないものらしい。一つ勉強になった。

「SAYURI」は9歳で置屋に売られた女性の物語。主人公の千代は,つらい日々の中で「会長」と呼ばれる紳士に出会い優しい言葉をかけられる。千代はその後芸者として名を上げ会長と再会することだけを夢みて生きていく。

今年は芸能人同士親と子ほどに年の離れた結婚が目立った一年だった。先日,篠原涼子がテレビでこう言っていた。

「同世代は自分のことが好きな人が多いからこちらを見つめてくれない」

たしかにそうかもしれない。

0時30分終演。キャストの字幕が流れ始めると,みんなそそくさと出ていってしまった。

 

さて,一つ気になることがあった。クリスマスファンタジーのイルミネーションが今夜は朝の7時まで終夜点灯されるというのだが,そんな真夜中にクリスマスツリーを見に行く熱心な人はいるのだろうか。

寒風吹きすさぶ中,再びウォーターフロント地区へ向かう。

なかなかの賑わいである。交通規制が解除されたので,多くの人は車の中からツリーを見学しているようだった。

寝静まった函館朝市。

函館朝市のクリスマスツリー。

函館駅の待合室。大きなカバンを持った人たちは,サンタクロースだろうか。

函館1:23発→札幌6:07着 急行はまなす

全国でも珍しくなったブルートレインの急行はまなすが銀河の中を走り抜ける。列車を引いているのは8頭立てのトナカイだ。

いそげダッシャー,いけダンサー,さあプランサー,それビクスン,とばせコメット,キューピッド,いいぞダンダー,ブリッツェン。かべをつたって屋根へ出ろ。頑張れ,一気に駆け上がれ!

夢もうつつに家に帰り,玄関を開ける。万が一と思って,長靴の中をのぞいてみたが,何も入ってはいなかった。

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