北海観光節旅行記ディスカバー阿寒

源泉まつり

川湯温泉源泉まつり

7月1日から8月24日まで川湯神社境内で毎日源泉まつりが開催されている。

まずは神社にお参り。


射的

型抜き

境内には

夏の川湯はアベック通り 硫黄山よりなお燃えて 肩を寄せあう影ばかり 

と少々色っぽい新川湯音頭が流れ,パチン,パチンという射撃の音が温泉情緒をかき立てる。


20時からはマジックショーが。

本物の職業手品師を見るのは初めて。名前を何というのか知らないが,ミスターマリックとみのもんたを足して2で割ったような,腕もしゃべりも良い手品師で,携帯していた双眼鏡で手元を凝視してみたものの,まったく種はわからなかった。

最後は銀の輪を使った幻想的なマジック。感動したので投げ銭をはずんでおいた。手品師と握手してもらって,名残を惜しみつつ会場を後にする。


川湯温泉の本陣にあたる御園ホテル。

御園ホテルからニュー湯の閣にかけてのお土産屋街。まったくと言って良いほどお客が入っていないのが気がかりである。

ホテルニュー湯の閣は昨年末に内風呂を改築,旧来の建物も内装を改装して今年「温泉浪漫の宿 湯の閣」と名を変えた。建物の一部が「別館湯元 池田屋」となったようである。ただ個人的には古い内風呂のほうが味わいがあって好きだった。

夷酋列像館

観光ガイドブックやインターネットでは紹介されておらず,怪しげなリーフレットのみによってその存在を知られる観光施設である。

営業しているのかどうかも不明だったが,先ほど宣伝カーが温泉街を回っていたので来てみた。

会場の前では誰も通らない道路で数名の少年が客引きを行っており,入館料1200円のところ1000円に負けてくれた。

館内ではアイヌの民芸品や幻の茸・樺のアナタケを販売していた。

  

これが夷酋列像(複製)。松前藩の絵師,蠣崎波響の画である。

16世紀の末に松前藩が蝦夷地に進出したが,18世紀の中頃になっても東蝦夷地の奥地では強力なアイヌ勢力が存在していて,和人との関係がうまくいっていなかった。請負商人の飛騨屋がクナシリに進出すると過酷な使役がアイヌの反発を招き,1789年5月,和人71人が殺害されるというクナシリ・メナシの戦いが起こる。

鎮圧に動き出した松前藩に対し,アイヌの酋長達はそろって松前藩側に立ち,アイヌ勢に恭順の態度をとらせたので鎮圧軍との戦闘は避けられた。これは反乱者全員の助命は難しいとしても,事件の背景を松前藩が理解してくれたなら,相当数の助命が可能であろという考えがあったからである。しかし松前藩は,37名を死刑にした。

夷酋列像はクナシリ・メナシの戦いで松前藩に協力した12人の酋長らを絵にしたもので,みな蝦夷錦などを身にまとう威風堂々とした姿で描かれている。松前藩は「有功者」を絵に描いて,勧善懲悪を夷人に示そうとしたのである。

第1部を見たお客さんが帰ってしまうと,残ったのは一組の夫婦と私の3人だけになってしまった。お互い自分たちだけでなくてよかったと顔を見合わせた。

第2部はお客が増えるのを待ってなかなか始まらなかった。21時10分,客引きの少年からようやくゴーサインが出て,結局観客3人のまま上演開始となった。

写真では明るく見えるが,実際はたき火の明かりだけなのでもっと暗い感じがする。そんな中でアイヌの人たちが肉声と手拍子だけで踊る。

これは本物だ。

今日は阿寒湖でもアイヌ踊りを見たが,どうも観光化され過ぎて心打たれるものではなかった。それにくらべてこちらにはなまめかしさのようなものがある。

これほどの踊りがほとんど誰にも知られることなく,毎日このような寂しい状況で踊られ続けているのは非常にもったいないことである。7月3連休のハイシーズンで観客3人というのはまずくないか。宣伝の仕方にも問題があろうが,川湯温泉では出し物が多すぎという感じもする。源泉まつりのマジックショーとアイヌ踊りの時間が重なっており,さらに今日は悪天候で中止になったがホテル宿泊者を対象にした「摩周湖星紀行」というバスツアーも同じ時間帯に実施されているのである。共倒れにならないか心配だ。

唄に踊り,ムックリの演奏と次々に演目が進み,踊りは佳境に入る。

サルルン・リムセ=鶴の舞。この舞が始まると,隣の奥様は涙を流していた。私もつられて涙する。

次の「色男の舞」では観客に参加願いたいという。といっても観客に男は隣の奥様の殿方と私しかいない。お互い譲り合ったが,観念して私が舞台に上がった。

訳もわからないまま,裏で着替えをさせられアイヌのおばさまの後ろについて登場。たった2人の観客は大きな拍手で迎えてくれた。

踊りは2人の女性が1人の男を激しく奪い合うというものである。2人のおばさま(おばさまと言うには少し失礼な年齢かもしれないが暗いのでよくわからない)が両側につき,顔を見合わせたり,手を引っ張られり。

写真は撮らなくてもよいと言っておいたのだが,奥様の殿方が勝手に私のカメラを取ってシャッターを押していたようで,はっきりと写っていた。

最後,「今夜はきっと良い夢を見られますよ」と言われて,記念のキーホルダーをもらった。

帰りはホテルまでご夫婦と話しながら帰った。ご夫婦は大阪から来たという。昨日は知床に泊まり,今日は川湯パークに泊まっているという。夷酋列像館のことは宣伝カーを見て知ったという。

先ほどの手品師がみなにどこから来たのか尋ねていたが,ほとんどが道外からの観光客だった。川湯はもともと道外客の比率が高いが,道外客が川湯温泉に泊まりたくて来ているのかといえばそうではなく,実際に来てみて初めて川湯温泉の素晴らしさに気づく,あるいは気づかないまま立ち去ってしまうのは残念なことである。

ただいまの時刻21時45分。こんな時間になってもお土産屋には人が絶えないが,こんな遅くまで起きて稼がなければならないお土産屋の実情を思うとむしろ心配である。

次へ