北海観光節旅行記それでも僕は東北へ行く

熱海温泉

富士急ハイランド17:14発→御殿場18:20着 富士急山梨バス 御殿場駅行き

ゲートから少し離れたバス停では大勢の少年少女がバスを待っていた。バス1台に乗り切れるか心配だったが,およそ半数は甲府行きを待っている人達だった。二人連れは意外と少なく,同姓のグループが多かった。東洋系の外国人グループもかなりいた。それにしてもみんな若く,大半が10代のように見受けられた。

バスは山中湖畔を通り,御殿場へ向かう。カープの多い峠道をけっこうなスピードで飛ばしていた。

御殿場駅到着。古くから軍都として知られた御殿場は,自衛隊の町で育ったわたしにとっても馴染みのある地名だった。お父さんの転勤で御殿場に引っ越していった友達や,演習のために家族ぐるみで何ヶ月か御殿場に行ってまた帰って来るような友達も何人かいた。

そんな軍都としての印象から,旭川の師団通りのような堂々とした大通りが駅前からまっすぐ延びているというような光景を想像していたのだが,意外とこじんまりした駅で,イルミネーションで華やかに飾られていた。


日本を知るための次の観光地は熱海温泉である。はやりの乳頭温泉や,城之崎温泉,黒川温泉も良いが,日本の温泉を語るには,まず熱海温泉に入っておく必要があるだろう。

御殿場18:29発→沼津19:01着 御殿場線 沼津行き普通列車

移動経路のきれいさを重視するなら国府津経由で熱海に向かいたいところだが,日も暮れたので素直に接続の良い沼津回りにする。

沼津19:05着→熱海19:37着 東海道本線 東京行き普通列車

2階建てグリーン車を連結した豪華普通列車。

熱海駅到着。熱海というからには,改札を出ると旅館の名が大きく書かれたのれんを持った宿引きがずらりと並んで待ちかまえているというような光景を期待していたが,そんなものはまったくなく,観光案内所も既に営業を終えていた。

駅舎の2階には趣深い食堂街があった。

熱海駅前。熱海駅は温泉郷の玄関口であるとともに,熱海市の中心駅でもあり,温泉情緒にはやや欠けるところがあった。

駅前の商店街。20時前にして,ほとんどの店がシャッターを下ろしていた。

今日は列車の接続が良すぎて,昼間まともな食事ができなかった。とりあえず,それなりに客が入っているラーメン屋を見つけたので食事をしておく。みそラーメン600円+ライス150円。

熱海ムーンライトビーチ

熱海の海岸線は2004年春から石井幹子氏のプロデュースでライトアップされている。展望できる場所を探してみると,資材置き場のようなところからガイドブックに載っていたのと同じアングルで素敵な夜景を眺めることができた。

熱海サンビーチは白い砂浜で,青い光でほのかに照らされていた。手すりにもたれてしばらくたたずんでいると,2つ並んだ黒い影が,何度か通り過ぎていくのが見えた。

熱海で思い起こすのは,小津安二郎監督「東京物語」の場面である。

尾道から東京の子供達に会いに来た老夫婦が,子供達みんなに邪魔者にされてとうとう熱海へ追いやられてしまう。熱海の防波堤に背を丸めて座った二人がしみじみ話す。

とみ 「お父さん,もう帰りたいんじゃないんですか?」
周吉 「いやあ,お前じゃよ。お前が帰りたいんじゃろ。東京も見たし,熱海も見たし,もう帰るか」
とみ 「そうですなあ,帰りますか」

あの防波堤が,いまは跡形もなくなってしまったが,場所的にはこのあたりらしい。並木がきらびやかな電飾で飾られ,タクシーの運転手に案内された女性のグループが,しきりにきれいだと言って写真を撮っていた。

ワカガエルステーション

ワカガエルステーションという名の熱海市観光協会案内所。ここは三波先生ゆかりの地である。

 

「ワカガエルステーション」という名は,伊豆新世紀創造祭−チャレンジ伊豆2000!が開催された際につけられたもので,イベントのテーマソング「イズノスケ音頭」に由来している。イズノスケ音頭は三波先生最後のシングルCDとなった「富士山」のB面に吹き込まれており,イズノスケというカエルのキャラクターが「ワーカガエル ワカガエル」と踊るのである。

糸川に渚橋や柳橋がかかる一帯は,熱海でも最も華やかな一帯だった。桃色の看板を出した店もあり,客引きがあった。このあと熱海銀座商店街を通ってホテルに向かった。途中には大湯間欠泉や湯前神社もあったが,ひと気はなかった。お土産屋もなかった。熱海温泉は浴衣を着て出歩くことができる温泉街ではなかった。

本日のお宿はホテルアイオラ。宿帳に札幌市西区・・・と書いていると,「お仕事でお越しですか」と聞かれた。年末に札幌から熱海に仕事で来るとはどんな人だろうかと思いつつ,「いいえ」とだけ答えておいた。

このホテルは閉鎖された保養所を改修して2004年に開業し,最近流行のB&Bスタイル(寝床と朝食だけを提供する方式)で人気を呼んでいる。7000円でこんなに広い部屋に泊まれるとは素晴らしい。

温泉も源泉かけ流しで素晴らしかった。お湯は若干渋みのある食塩泉で,たしかに名湯という感じがした。

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