北海観光節旅行記東日本縦断旅行

東海林太郎歌碑

さて,いよいよ赤城山における最終目的地,赤城の子守唄歌碑に向かう。これも下調べでは場所があいまいで,わかったのは廃止された登山鉄道の山頂駅に碑があるらしいということだけだった。

観光ガイドブックに載っていた,お食事処・風の庵。「星がでる頃まで営業」とのことだったので,帰りのバスに乗る前にここで食事を取ろうと思っていたが,冬季は15時で店じまいとのこと。

 

ひっそりとした第三スキー場。

赤城公園ビジターセンター。

ビジターセンターのレストハウスがかろうじて営業していた。店をしまう準備をしていたところだったが,「バスに乗るんでしたら,まだ大丈夫ですから中で休んでいってください」と言われた。

しかし,休んでいるほどの時間はない。「この上に赤城の子守唄の碑があると聞いたのですが」と尋ねると,「子守唄の碑? 碑はあったけどそうかしら」と心もとない返事。

せっかくなので,長脇差 のキーホルダーを買っておいた。

鳥居峠に向かって探索を再開する。

こんなところに小学校があった。調べてみると旧富士見村の赤城山分校で,12年前に休校になっている。

高層湿原の覚満淵。

「東海林太郎歌碑」の看板があった。

歌碑は関東平野を見下ろす峠の頂上にあった。意外と新しく,平成6年8月に建立されていた。建立趣旨は次のようであった。

「日本の歌謡界に大きく貢献され,昭和の一頁をその歌声で飾り,多くの人びとに愛され親しまれた東海林太郎先生の直筆による代表作品,『赤城の子守唄』『名月赤城山』の歌碑を建立し,その徳を偲び讃えるとともにご賛同いただいた有志各位に,心より感謝の意を表し,赤城山観光の開発を祈念してここに記します」

 

東海林太郎の直筆による《赤城の子守唄》《名月赤城山》の歌詞。

碑を前に,《赤城の子守唄》を一節唱え,合掌した。

関東平野を眼下にする,素晴らしい眺めだ。

 

ところで,ここは廃止された赤城登山鉄道(ケーブルカー)の山頂駅跡である。廃止から40年以上がたつが,駅舎やホームはそのまま残っていた。

ケーブルカーの線路跡は,遊歩道として活用されているようだった。


日本交通公社時刻表,昭和36年10月号

赤城登山鉄道は昭和32年から42年まで,わずか10年間しか営業を行っていないが,昭和36年当時の時刻表を見ると,10分間隔と,かなりの頻度で運転されていたようである。麓の利平茶屋駅と東武桐生線の赤城駅の間は東武鉄道のバスが結んでおり,1日に9.5往復していた。赤城駅はもともと新大間々駅と名乗っていて,赤城登山鉄道が開通した際に,赤城山の新たな玄関口になることを期待して,赤城駅と改称したのである。

一方,前橋〜赤城山間のバスは,現在1日に4.5往復だが,当時は13往復もあった。これほどの観光地が,なぜ廃れてしまったのだろうか。なにか事件でもあったのだろうか。

さて,風も強くなり体感温度はマイナス10℃を下回っている。さすがに寒くなってきた。先ほど湖畔の遊歩道を無理に歩いたのが災いし,靴の中がぐちゃぐちゃなのも気持ちが悪い。

赤城山ビジターセンター17:20発→富士見温泉18:05着 関越交通 富士見温泉行き

始発の停留所なのでバスが早く来てくれることを期待し,発車20分前にはビジターセンターに戻った。バスは17時08分,停留所に来た。

運転手さんは,駐車場に車が1台停まっていたのを気にしていた。今の時期は遭難が多く,実は自殺者もけっこういるのだと言っていた。

バスの乗客はほかにいなかったが,乗客がいること自体が珍しいという。ほとんどの観光客は,午前中のバスで来て,15時のバスで帰るそうだ。観光客といっても,バスに乗るのは今時期1日で5人くらいだと言った。土日祝日には前橋駅から直通の急行バス運行され,「赤城山線限定1日フリー乗車券」という企画乗車券も発売されるが,これとてほとんど乗る人はおらず,補助があるので何とか運行を続けられるとのことだった。

観光客は,何を目的に赤城山に来るのかと聞くと,今の時期だとスキーやソリ滑り,山に登る人がけっこういるとのことだった。もう少しすると,ワカサギ釣りでも賑わうという。また,夏は新坂平のレンゲツツジを見に来る人で,道路が渋滞するそうだ。

それにしても,この寂れ様はどうしたのかと聞くと,特に何かがあったわけではなく,赤城山まで来なくてもほかに見るところがたくさんできたからだろうとのこと。また道路も整備されたため,マイカーで日帰りで訪れるようになり,そうするとお土産屋にも寄らなくなるので観光地としては寂れていくとのことだった。たしかにそれはそうだと納得した。

夜には九十九折れの道路が,走り屋のメッカになるそうだ。言われて気がついたが,カーブの手前では,路面が波状になっており,これは走り屋対策とのことだった。

途中でカモシカが道端に見えた。赤城山は前橋市に属する。前橋といえば,北海道から見るとほとんど東京と区別が付かない都会であるような印象を持っていたが,意外に自然に恵まれたところだと思った。

富士見温泉18:12発→前橋駅18:42着 関越交通 前橋駅行き

このバスも乗客は私のみ。

今日は10時過ぎに軽くカレーを食べてから何も食べていない。さすがにお腹はぺこぺこである。富士見温泉で,「前橋名物甘太郎焼」を買い,バスの中で一気に食べた。

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