北海観光節旅行記熊野古道と北リアス線

果無峠

世界遺産碑付近から和歌山県龍神村方面の眺め。

9時20分,最後の人家を過ぎ,ここからいよいよ本格的な山道となる。現在の標高は約410m,ホテル昴から250m余り登っている。

雨はしとしと雨で,幸いに風もないので,峠越えを決行することにした。

 

約20分ほど登ると,開けた場所に出た。標高は約620m。この先にあった山口茶屋の住人が,雨水だけを頼りに耕作した「天水田」の跡地だという。

さらに6分歩き,山口茶屋跡に着いた。立派な石垣と,屋敷林の杉の巨木が残っており,確かに人が住んでいたのだということがわかる。大正の頃までは茶屋が営まれていたらしい。こうして,自然へ還っていく人間の活動の痕跡が,これからどんどん増えていくのだろう。

道沿いには西国三十三観音が点々とまつられていた。

尾根道をひたすら登る。雨ながらに風情があって,いいなあと思う。

10時10分,果無観音堂に到着。軒下でしばし雨宿りをさせてもらった。

観音堂の前には「世界遺産登録記念登山給水所」があったので,ありがたく口に含ませてもらう。

10時22分,登りを再開。時折眺めのよさそうなところもあるが,何も見えない。

「お前,雨の熊野古道を歩いたことはあるか」と問われたときに,ありますと答えられるであろうことを慰めに,雨を含んで重くなった足を前へ進める。

スギは間伐材がそのまま放置されていた。間伐材も利用できれば良いのだろうが,この山奥では運び出すほうがお金がかかるのだろう。

10時43分,ホテル昴から2時間13分で果無峠に到着した。標高は約1070m。これまで雨とはいえ,風を感じなかったのは幸いだったが,風が勢いよく通り抜けていることに,峠であることを感じた。

100円のビニル傘も,何度か木に引っ掛かりながらも,まだ無事だ。

峠からは1000m下ることになる。道は正面に見えるが,勾配を緩くするのに,大きく右へ迂回している。こういう道の形は地形図にも描かれていない。鬼峠にも冬なので道がわからずにまっすぐに降りてしまうが,実はかなり迂回して道がつけられている場所が,いくつもあるのだと思う。

峠から約40分で二十丁石を通過した。二十丁というのは峠から約2kmということらしい。

下りは怖い。石畳というのは,見た目には良いが,雨が降ると滑る。こんなところで,滑って怪我でもすれば大変なことになるから,慎重にも慎重を期して,ゆっくりと降りていく。

さらに15分で三十丁石を通過。

11時57分,奈良・和歌山県境の七色分岐に差し掛かる。

この少し平坦なところが七色茶屋跡。明治の終わりまで茶屋があったという。

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