北海観光節旅行記熊野古道と北リアス線

発心門王子

「川湯まつや」はビジネスホテル風の旅館で,一人旅でも割と安く泊まることができた。

 

チェックインして,まずは雨に濡れたものの乾燥に取り掛かった。財布の中のお札から,プラスチックの袋に入れておいたはずの替えの下着まで,全部水没状態だ。

これほどぐしょ濡れになったのは,2003年の8月,大雨の中で大曲の花火大会を8時間に見続けて以来だ。あの時は,夏だったので,翌日までに乾ききらなかったが,今日は冬なので,頑張れば乾くと思う。古めかしいエアコンの温度設定を上げ,部屋に二つあった白熱灯も総投入して乾燥に挑む。

 

食事は,150mほど離れた系列旅館の「山水館川湯みどりや」でとることになっている。

「まつや」と「みどりや」では浴衣の色が違うのだが,「まつや」の浴衣はほかに見かけなかった。一人旅の人もいない。みんな幸せそうな二人連れか家族連れだったが,この人たちは昼間熊野古道を歩いたわけでもないだろうに,何のために泊まっているのだろうか。

 

お土産屋は結構大きかったものの,魅力的なものはなかった。ただ,長寿手拭いが7種類もあった。

本宮温泉郷の中でも,あえて川湯温泉に泊まったのは,北海道の川湯温泉をひいきににしている行きがかり上,和歌山県の川湯温泉にも入っておきたかったからである。

お湯はけっして悪くなかったが,北海道の川湯温泉のお湯に比べるとやはり物足りなかった。風呂は,みどりやの大浴場よりも,まつやの内風呂のほうがむしろ良いと思った。朝は独り占めだった。

2012年12月31日(月)

朝食は,再びみどりやにて。今度はまつやの浴衣を着た人や,一人で食事をしている人も結構いた。

川湯温泉8:02発→発心門王子8:27着 龍神バス 発心門王子行き

今日の予定は空白だった。とりあえず,紀伊田辺駅に17時半までに着けばよいのである。事前に予定を組まなかったのは,熊野古道を歩くのに,実際どのくらい時間がかかるかわからなかったからである。

熊野古道といっても,生活道路としての色合いが濃い道,参詣道としての色合いが濃い道,観光的要素の強い道など,それぞれに特徴を持っている。

このうち,生活道路としての古道は,昨日の果無峠でだいたい雰囲気がわかったように思う。それと,一日古道を歩いて,一人も出会わないというのは寂しいので,今日は観光的要素の強い道を選んで歩いてみようと思う。蟻の熊野詣と言われるほどの混雑は興ざめにしても,ときたま同志に会うくらいの楽しみがほしい。

まずは,古道歩きのスタート地点として,定番中の定番である発心門(ほっしんもん)王子へと向かう。

冬季のみ入浴可能な川原の露天風呂「仙人風呂」は,昨日旅館で案内があったとおり,雨による増水で入浴不可だった。

川湯キャンプ場。冬なのにキャンプをしている人がたくさんいて驚いた。

本宮市街を経て,細い道をさかのぼっていく。

バスの終点,発心門王子到着。

 

発心門の名前は,ここから熊野の聖域に入るというようなことからきており,かつては大きな鳥居があったという。

王子というのは,参詣者を守護する熊野権現の御子神であるというが,1000年来の歴史があって,かつて上皇などの参詣の際には,道中の王子でさまざまな儀式が執り行われたという。

路線バスから降りた人のほか,旅館の車に送られた人も次々に到着していた。山ガール風の女性が伸びをするのもいかにも熊野古道らしかった。昨日のしとしと雨から一転し,朝の空気は清々しく,天気が違えばこんなに気持ちが良いものかと思った。朝,宿を出るときにはまだ湿っぽかった靴の中も,もう乾いたようだ。

  

田辺に向かうのだから,本当は右手の山道を行くのが順路であるが,今日は観光化された古道を行くのが趣旨であるから,左手の本宮方面に進む。

本宮温泉郷の旅館に泊まり,朝旅館の車で発心門王子まで送ってもらって本宮大社まで歩くというのが,最もポピュラーな古道の歩き方らしい。

発心門休憩所。屋根と簡単な案内地図があるだけだった。

しばらくのどかな集落を歩く。

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