第49回矢臼別平和盆おどり大会

訪問日:2013年8月10日(土)

場所:別海町矢臼別平和碑広場

 

陸上自衛隊最大の演習場である矢臼別演習場に取り囲まれた民有地で,昭和40年(1965年)から開催されている盆踊りである。会場は,釧路と羅臼を結ぶ国道272号線の厚岸・旧根室郡界付近から,ほぼ風蓮川に沿いながら約6キロメートル下った位置にある。道端には時折盆踊りの幟が立っているものの,やがて車路は未舗装となり,射撃訓練の状況を示すものものしい電光掲示板が現れて不安になる頃,ぽっかりと拓けた牧場跡があった。

 

矢臼別は戦後パイロットファームによる開拓が企図されたが,演習場の設置により中止された。84戸の既存農家が用地買収に応じる中,買収に応じなかった農家が2戸あった。盆踊りはそのうち1軒の牧場跡が会場となっている。

全北海道労働組合協議会,釧根地区労,共産党釧路地区委員会などは昭和37年(1962年)頃より演習場設置反対の共闘を開始したが,昭和39年には前述の2戸を除いて農家の用地買収が完了することとなった。昭和40年,誓いも新たにこの矢臼別平和碑を建立し,完成祝いに平和盆おどりを開催したのが,本盆踊り大会の起こりである。

 

2013年現在,2戸の農家跡地には,それぞれ移住者が引き継いで暮らしており,実弾射撃訓練の監視など,平和運動の拠点となっている。

大会事務局。会場は8月に入ってから,何日もかけて平和運動の支援者の人たちが手弁当で設営してきたもののようである。

 

広々とした会場。地場産品の販売もあった。広場の中央に置かれた櫓は珍しい木製である。

芝田重郎太碑。共産党員として別海町議会議員などで活躍していた人だという。

18時10分から始まったうたごえ交流。合唱団アンラコロと会場の参加者で,「沖縄を返せ」「たんぽぽ」「青い空は」「この勝利ひびけとどろけ」などを歌った。映画に出てきそうな,労働者による歌声サークルそのもので,いいなと思った。

18時40分,開会集会が始まった。司会は道東勤医協釧路協立病院職員の2名。

開会を告げる民族歌舞団「花こま」の八丈島太鼓。

 

実行委員長である別海町農民組合小杉代表の挨拶。続いて,紙智子日本共産党参議院議員のメッセージが読み上げられた。その後,当地に暮らす,浦氏,渡辺氏から近況報告があった。

19時30分から文化交流のステージが始まった。まずは,別海町スワンの家のバンド「ジュークボックス」の演奏。

 

次は,「花いかだ」の面おどり。折しもこの年6月11日,沖縄駐留米海兵隊による実弾射撃訓練中に,砲弾が演習場外に着弾するという事故があり,このことを題材にした「演習場外着弾事件」の巻が演じられた。

民族歌舞団「花こま」の車人形「新曲まんざい」。姫路勤労者音楽協議会を母体とし,国鉄分割民営化反対闘争などの盛り上がりなどを背景に,昭和62年に設立されたグループだという。

それにしても,みな芸達者だ。闘争と民俗芸能とは何か結びつくものがあるのだろうか。

  

各団体のテント。

 

矢臼別の演習だけではなく,原発,TPPなどいろいろなことで反対活動を行っているようである。

 

うたごえ交流,全体集会が終わり,いよいよ盆踊りが始まる。20時24分,トランペットの合図で花火に点火。北海道の花火大会では珍しく,「玉屋」と声がかかった。

 

20時30分,開会宣言は全釧路教職員組合が担当。そしてかがり火に点火。

盆踊り 20:00〜21:00

盆踊りは予定より遅れて20時40分に始まった。お囃子は北海盆唄で,標準的なIII型歌唱だった。演奏は太鼓のほか三味線と笛が加わっていた。先ほどまでの舞台発表に負けず,本格的な囃子舞台である。しかしあくまでも普段着か作業衣なのは,むしろ盆踊りとして独特の雰囲気を醸し出していた。

唄われた歌詞は,次のとおりで,この地の平和運動を詠み込んだものが多い。歌詞に出てくる「時速4キロ」とは,当地の地主だった川瀬氾二氏の人生観で,敷地内には「時速四キロの人生」と銘打たれた石碑が建立されている。

北海名物 数々あれど おらが国さの 盆踊り
五里も六里も 山坂越えて 逢いに来たのに 帰さりよか
ちゃんこ茶屋の婆 お茶出せ茶出せ 煙草盆出せ キセル出せ
盆が来たとて お正月来たて 親父着せなきゃ 丸裸
○○○○○○を 浴衣に変えて 踊る平和の 盆踊り
矢臼名物 数々あれど おらが平和の 盆踊り
盆に轟け 矢臼の太鼓 平和太鼓の 盆踊り
矢臼○○から ○○○○○○○ アメリカ追い出せ 盆太鼓
唄え踊れよ 叩けよ太鼓 月の世界に 届くまで
揃ろた揃ろたよ 踊り子が揃ろた 稲の出穂より なお揃ろた
どんと陽気だ 矢臼の大地 おらも来た来た 腕組みに
五里も六里も 山坂越えて おらも平和の ○○○○た
○○○が○○○う 勝利の○○○ 戦い続ける 盆踊り
○○○戦う ○○○○○○○ 平和太鼓だ 道しるべ
時速4キロ 川瀬さんの人生は 命輝け 道しるべ
北海名物 数々あれど おらが○○○の 盆踊り
踊り踊るなら ○○○で踊ろう 矢臼平和の 盆踊り
時速4キロ 川瀬さんの人生は 平和勝ち取る 道しるべ
安保なくせ 地球上でなくせる ともに戦う 道しるべ
空に轟け 矢臼の空に 平和勝ち取る 盆踊り

盆踊り動画(MP4,6.2MB)

盆踊りは21時6分終了。

 

終了後は手際よく表彰式に移り,6位から点数とともに発表された。景品は簡素なもの。

 

21時20分,雨も降ってきたが,今度はステージ交流が始まった。再び合唱団アンラコロが登場。夜は更けても,いたってまじめな歌声だ。まじめに生きることはいいことだ。しかし,国や自衛隊も大概はまじめにやっているはずだ。まじめな人どうしが,なぜこれほどぶつかり合わなければならないだろうか。

交流プログラムは24時まで続くようだが,ここで会場をあとにした。