めまんべつ納涼ぼん踊り

訪問日:2015年8月9日(日)

場所:大空町ゲートボールセンター駐車場

  

空港があることで知られる女満別は,2006年東藻琴村と合併して大空町となった。旧女満別町域の人口は約5,000人と,戦後のピーク時から見れば半減しているものの,小麦,じゃがいも,肉牛などの農業や空港関連産業を基盤として,この40年ほどは比較的安定した人口推移を示している。

本行事は前年から「新女満別音頭」が導入されるとともに,「女満別よされ」という独自の盆踊り唄が用いられているとのことで,訪ねてみることにした。

主催は「めまんべつ盆踊り保存会」。櫓に掲げられたひまわりの絵からして,力の入れようが感じられる。盆踊り保存会は商工会を中心とする町内有志からなり,性別,年代を問わず会員を募集中とのことだったが,ほとんどのメンバーが20代から30代前半に見えた。この町の元気や青年たちの盆踊りへの思い入れはどこから来るものだろうか。

18時に会場に着いたときにはちょうど子ども盆踊りが終わったところだった。曲は「子供盆おどり唄」のタンポポ児童合唱団盤が使用されていたようである。

18時からの来賓挨拶(山下町長)に続き,18時10分から中学生以下を対象とした,子ども餅まき(お菓子あり)が行われた。

18:20〜 新女満別音頭,仮装盆踊り

 

踊りの開始に先立ち,仮装の参加者が内側の輪に誘導され,仮装参加者が時計回り,一般参加者が外側の輪で反時計回りという形で踊りの輪が形成された。新女満別音頭は録音の伴奏を用い,保存会による生の歌唱で演奏された。

新女満別音頭は昨年から盆踊りに取り入れられたばかりで,振付けはまだ浸透していないようだったが,町内の舞踊団体「まろみ会」がお手本で踊っており,踊りの後半には見様見真似でだんだんと踊れるようになっていた。

25分ほど踊って終了。郷土の音頭は曲を1回か2回かけて終了という盆踊りが多い中,生唄でたっぷり時間をとっていたのは素晴らしい。

新女満別音頭動画(YouTube)

20分ほど休憩ということで,よさこいのチーム「女満別龍舞隊」による演舞が行われた。地方車でがなり立てる典型的なよさこいではなく,舞踏会を見るような品のある演舞だった。

 

会場内では子供縁日や飲食の出店もたくさんあった。足場の覆いを利用し,協賛企業名がスライドで投影されていた。

19:00〜 女満別よされ,仮装盆踊り

19時から「女満別よされ」による盆踊りが始まった。新女満別音頭のときと同様,仮装参加者は内側で時計回り,一般参加者は外側で反時計回りという形で行われた。

めまんべつ盆踊り保存会による生演奏。お囃子は太鼓のほかに篠笛が入っていた。北海道では札幌周辺以外で盆踊りに笛が使われるのは珍しいが,オホーツク地域では遠軽,生田原方面も笛が入る。

「女満別よされ」であるが,節は「北海よされ節」と同じである。しかし,北海よされ節は上の七七と下の七五の間に七五を2回繰り返す「七七+七五七五+七五」に統一されているのに対し,ここで唄われたのは,

・七七+七五

・七七+七五七五+七五

・七七+七五七五七五+七五

・七七+七五七五七五七五七五+七五

の型があった。もともと北海道で唄われていた通称「よされ盆唄」は,「あんこ入りよされ節」「字あまりよされ節」とも呼ばれ,あんこの七五の繰り返し回数は統一されていなかったと見られる。何度も繰り返すのは単調だというので,札幌の今井篁山が2回に統一したのが「北海よされ節」である。また「北海よされ節」で唄われるNHKやHBCの公募歌詞が,女満別ではまったく採り入れられていなかった。

最も短い七七+七五は北海盆唄と同じ甚句の型だが,北海盆唄の代表的歌詞「北海名物……」「波の花散る……」「五里も六里も……」も,女満別では唄われておらず,道外の民謡からの引用と女満別独自の歌詞を基本としている。なので北海盆唄の影響も見られず,形的には本州から持ち込まれたままの「よされ盆唄」がそのまま残っていると見える。

七五の繰り返し回数は,遠軽,湧別方面の盆踊りでさらなる長編物が存在する一方,七七+七五の形式は,いまのところ女満別以外で聞いたことがない。したがって,女満別よされの特徴を説明するならば,「あんこなしを含むよされ盆唄」ということになる。あんこなしのよされ節は,甚句形式の歌詞を流用するための省略形と見ることもできるが,北海道のよされ節の直接の祖先とされる津軽よされ節の旧節は七七七五調であり,それがそのまま残っている可能性もある。

なお,囃子言葉の「コイサッサ」「ハ エンヤーコーラヤッチョ ドッコイジャンジャンコーラヤッチョ」は,道内各地の盆踊り唄と共通性が見られる。

下記動画には「七七+七五七五七五+七五」「七七+七五」「七七+七五七五七五+七五」の順に歌詞を収録している。

女満別よされ動画(YouTube)

■七七+七五の歌詞

揃ろた揃ろたよ 踊り子が揃ろた 稲の出穂より まだ揃ろた よされソーラヨーイ
踊り踊るなら 品よく踊れ 品のよい子を 嫁にする よされソーラヨーイ
入れておくれよ かゆくてならぬ 私ひとりが 蚊帳の外 よされソーラヨーイ
してもしたがる 爺様と婆様 今朝もしてきた 寺参り よされソーラヨーイ
踊り踊るなら 三十まで踊れ 三十過ぎたら 子が踊る よされソーラヨーイ
嫁にするなら 女満別娘 花にたとえりゃ 水芭蕉 よされソーラヨーイ
湖行くなら 二人で行け 一人で行くなら やぼなやつ よされソーラヨーイ
女満別町来たなら 水芭蕉見れよ ○○○○○とる ○○○○○ よされソーラヨーイ
お前百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の はえるまで よされソーラヨーイ

■七七+七五七五+七五の歌詞

筆を柱に 硯を筆に 書いた手紙を ふりまいて  思う港に 着いたなら 早く碇を 下ろしましょ よされソーラヨーイ
○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○ば世間の 人笑う  あなたなじみの 顔が○○ ○○○○なじみの 顔立てて よされソーラヨーイ
姉コいたかと 窓から見たら 婆のみったくなしゃ 窓閉めた  おらはそんなこた するもんじゃない おれも若いときゃ みな同じ よされソーラヨーイ
剥けた剥けたよ バナナが剥けた 父ちゃんが大好き ほんとだよ  母ちゃんも大好き ほんとだよ だけどちっちゃいから 全部食べ切れない よされソーラヨーイ

■七七+七五七五七五+七五の歌詞

二十日鼠が 一升二升三升四升 五升樽下げて 富士の山へと駆け上る  五升樽枕に 昼寝して 寅さん来たとの 夢を見て 命からがら 逃げてくる よされソーラヨーイ
姉と妹に 紫着せて どちが姉やら 妹やら  姉は山々 山桜 妹吉野の 糸柳 それに二親 下り藤 よされソーラヨーイ
どんぐりころころ お池にぽちゃり どじょこ(さん)が出てきて こんにちは  坊ちゃん一緒に 遊びましょ おいしいお菓子を あげるから こんなの付いてくもんじゃねえと 走って逃げる ソーラヨーイ

■七七+七五七五七五七五七五+七五 の歌詞

世の中という字も なかなか深い お染久松蔵の中  安珍清姫 井の中で 八百屋のお七は 室の中 石川五右衛門 釜の中 かわいい○○鳥 かごの中 わしとあんたは 深い仲 よされソーラヨーイ
電信柱に 燕が止まる 停車場停車場にゃ 汽車停まる  港港にゃ 船停まる 沖の○○○○ 碇で停まる 若いねいちゃんには 目に留まる 母ちゃんの腹には 子が留まる ○○て止まらぬ ○○の道 よされソーラヨーイ

■その他,唄われたものの歌詞が一部欠落していると思われるもの

ある日森の中 熊さんに出会った
さても哀れな 蛍の虫は 夜は細道 灯を照らす  忍び男の ためとなる よされ ソーラヨーイ
※「○○○」は音声不明瞭により歌詞不明

お囃子はかなり自由で,場の様子に応じて「唄より囃子だっちょ」「笛頑張って」などが囃子言葉に挟まれていた。

踊りの中盤で抽選券と参加賞の引換券を兼ねた手作りのゼッケンが配布された。踊りの妨げにならないこのような番号札は好ましい。もらって輪を離れようとする踊り手もいたが,係の人が強制にならない程度に柔らかく輪の中に戻るよう誘導していた。本当にどこまでも気の行き届いた盆踊りだ。

40分ほど休みなしで踊って,19時50分過ぎ終了。

ただちに櫓下で表彰式が行われた。仮装は個人・団体の区別なく8団体で,テーマは「鬼太郎軍団」「怪物君」「ゲゲゲの家族」「2代目本郷ジュニア」「ゴリラとゆかいなシマウマたち」「スターウォーズとスターの2本立て」「デスノート」「魔女の宅急便キキとかわいい仲間たち」。ゲゲゲの鬼太郎が2団体かぶってしまったのは気の毒だった。

3位:魔女の宅急便キキとかわいい仲間たち
2位:2代目本郷ジュニア
1位:鬼太郎軍団

 

引き続き,大抽選会。目玉はポータブル防水テレビ。盆踊り保存会長が箱からくじを引き,手際よく番号が読み上げられていった。参加賞はお菓子の詰め合わせで,本部テントでゼッケンと引き換えに受け取っていた。

20時28分,閉会あいさつで盆踊りが終わった。