臨時新幹線こまち86号は角館から花見客を満載して盛岡へ向かう。
さて,いよいよ今回の旅行の当初の目的である山田山線全駅乗降の開始である。山田線は列車の本数が少ないため,今日から足かけ3日わたり,盛岡を拠点として5回の波状訪問を試みる。まず初回は浅岸駅である。浅岸駅には一日2往復の列車が停車するが,事実上この列車で訪問するのが唯一の手段である。
なお,山田線については別途,北海道駅前観光案内所の特別編として各駅紹介を作成する予定なので,本旅行記の中では概要のみ書くことにする。
車内は盛岡から帰宅する人たちで賑わっていた。列車に入るなりふうっと息をつく。なんとも言えぬ心地よい雰囲気である。中高生は天使のようにけがれなく,爺さん婆さんは羅漢様のような穏やかな顔をしている。胸にたまっていた黒い水など一瞬にして浄化されてしまうような雰囲気,これぞ山田線だとあらためて感激する。
天子様,羅漢様の多くは上米内で下車したが,まだ1ボックスに1人ぐらいは乗客が残っている。上米内から谷は急に狭くなり,夕日に照らされた山峡を行く。
浅岸駅にて下車。
周辺の林道は盛岡市近郊自然歩道の大志田・中津川コースとして整備されている。
林道沿いの選挙看板。
![]() 立派な廃屋 |
![]() 簡素な廃屋 |
とりあえず駅周辺には人が住んでいる家はなさそうである。
先ほどの看板から200メートルと歩かないところにまた選挙看板。
旧中津川小学校。浅岸に来たからにはぜひともここを訪れたかった。昭和32年開校,同48年閉校。わずか16年だけの歴史の学校である。
山にやさしく包まれて あの花この花におってる
山間に咲くリンドウの 姿心も美しく ここ高原の中津川
「中津川小学校校歌」より
![]() 朽ちたジャングルジムとブランコ |
![]() 校舎は純然たる木造 |
![]() 体育館は鉄骨造 |
なんと今日は選挙の投票所として使われていた。この校舎はまだ現役なのだ。しかし,この周辺に何人の有権者がいるのだろうか。
約20分の散策を終えて駅へ戻る。
ホームの下にはコンビニ弁当の容器が散乱していた。世の中にはいろんな悪いことをする人がいるが,その人の立場になって考えてみれば,なぜそういういけないことをするのかたいていのことは理解できる。しかし自然の中に空き缶やプラスチックなど腐らないものを棄てるというのは,どうしても理解できない行為である。浅岸駅を訪れる人の中にこういうことをする不徳者がいるのは,大変残念なことである。(だったら拾え! と言われそうだが,気づいたときには列車の時間が迫っていたので,すみません。)
次の山田線訪問まで待ち時間1時間10分。ここで食事をとることにする。
駅前の盛楼閣。3度目である。
この店,混んでいるときに1人で行っても4人席に案内してくれるので申し訳なく思う。今日も行列ができていたので,「冷麺だけなのでカウンターでいいです」と言ってみたが,やっぱり4人席に案内された。しかし,それだけ店の人は親切だし,非常にてきぱきと働いていて良い店だと思う。おそらく地元の人は冷麺単品で食べるということはなくて,焼肉とセットで食べるものなのだろう。冷麺だけ食べているのは観光客だけと見受けられる。
ここの冷麺は辛さが7段階あって,前に上から4番目を食べて全然辛くなかったので,今日はいちばん辛い大辛を頼んだ。それでも全然辛くなかった。冷麺はつるつるした太麺でスープがあまりまとわりつかないことと,冷たいため辛さがあまり刺激にならないためであろう。平壌冷麺(大辛)900円+ライス300円。
21世紀とは思えない光景の4番ホーム。山田線はもとは本線ホームから隔離されたような1番ホーム(現0番ホーム)に発着していたが,現在そちらはIGRいわて銀河鉄道に譲り,本線ホームから発車するようになった。
大志田は浅岸より一つ盛岡寄りの駅。この駅を訪れるには,この列車に乗るよりほかない。遅い時間の列車のため乗客は少なく,上米内を過ぎると皆無となった。
大志田駅着。同じようにしてこの駅を訪れる趣味人が多いのだろう。ここで降りても車掌さんに変な顔をされることはなかった。
浅岸もそうであるが,大志田は昭和57年までスイッチバックの駅だった。本線から分岐する線路跡が残り,その向こうにはホーム跡も残っているはずである。
駅から下ったところに人家があるが,道が真っ暗で怖いため,行くのをやめた。このあたりは木の姿にも妖気が感じられ,不気味である。
大志田駅時刻表。下り1本,上り2本のみ停車。
無事,列車がやってきて盛岡へ戻ることができた。この時間に盛岡に着いても東京行きの新幹線はもうないため,大志田駅は全国屈指の訪問難易度が高い駅といわれている。
本日の御宿はホテル小田島。今日から2連泊である。今回は泊まれればよいということで安宿にしているが,それでもここは旅の窓口で評判が良いようだった。しかしちょっと期待はずれ。机がちっちゃすぎ。