富良野線

上富良野 かみふらの 有人駅
上富良野町中町1丁目
明治32年11月15日開業
標高213m  1192人
2線(対向式)
旭川より39.7キロ
美馬牛より9.1キロ
みどりの窓口
720-1500
(日祝休,6下-8下は日祝も営業)
駅前5分セブンイレブン
信号左5分ローソン
2001.7.21下車

●美馬牛→上富良野の車窓

美馬牛からは一転して急勾配を転がるように走る。美瑛−上富良野間は線路と国道がまったく別のルートを走る。国道は尾根道を行くのに対し,線路は谷間を行く。線路の両側は防雪林に囲まれて見晴らしは効かないが,途中右手に国道を望む。カルビーポテトの倉庫が見えるが,そのあたりがラベンダーで有名な深山峠だ。美馬牛−上富良野間は9.1kmと,富良野線で一番駅間距離が長い区間だが,このあたりにラベンダー見物のために臨時駅を作る話もあると聞く。
丘を下り終わって周りに畑が見えてくれば列車のスピードは上がる。再び減速してそろりそろりとS字カーブを抜ければ,深山峠を下ってきた国道237号が寄り添ってくるが,まもなく国道は上富良野バイパスとなって,右へ離れていく。右手の丘に輝いている施設は,フラワーランドかみふらの。
右前方に見える小さな林は草分神社で,隣には上富良野開拓記念館が建ち,三浦綾子の『泥流地帯』の文学碑もある。このあたりが大正15年5月の十勝岳噴火で最も大きな被害を受けたところで,まもなく渡る富良野川に沿って泥流が津波のように押し寄せてきたのである。時速60kmで山腹を下り,噴火からわずか20分で市街地に達した。この泥流により死者・行方不明者144人を出している。
まもなく,右手に「富良野平原開拓発祥の地」の碑が見える。ここは明治30年,田中常次郎率いる三重団体一行が富良野原野に着いて最初に腰を下ろした「憩いの楡」があったところ。三重団体は大酒は喰らわない,博打は打たないという規律を守る勤勉な団体だったとされるが,30年間まじめに働いて開墾した土地が一瞬にして泥の海と化す。正直者は救われないのかということが,『泥流地帯』における大きなテーマとなっているように思う。
左手に見える十勝岳連峰は素晴らしい。噴煙を上げているのが十勝岳で,北には美瑛岳,美瑛富士,オプタテシケ山,トムラウシ山から遠く旭岳へと続き,南には上ホロカメットク山,富良野岳が連なる。私も通学していたときに何度も山の名前を尋ねられたが,当時は山に興味がなく,十分な説明ができなかったのが悔やまれる。
富良野川を渡って2つ目の踏み切りの近く,西1線北27号という地に,明治31年,三重団体の一員として私の祖先は入植した。翌年には鉄道が開通し,この線路は帯広へ,釧路へ,北見へと延びていく。汽車に乗って道東の原野へ向かう開拓者たちを,どのような気持ちで見つめていただろうか。そして,大正15年,泥流で土地を失い,士幌に移住する。しかし,戦後になってまた上富良野に戻ってきたのである。私も何としてもこの土地で,祖先の霊が眠る墓を守っていきたいと思っている。
まもなく市街地に入り,上富良野駅に到着する。左手には3大ラベンダー園の1つ,日の出山公園が見える。

●上富良野駅

駅舎は昭和8年の建物で,道内の有人駅の中では最も古い部類に入る。貨物列車が廃止され,キヨスクがなくなったのは寂しいが,みどりの窓口は日交観に委託されながらも存続し,国鉄時代と雰囲気はあまり変わっていない。

待合室では夏季のみソフトクリーム屋が営業しており,ラベンダーの時期には観光案内所も開設される。駅前にはハイヤーが常駐している。
上富良野は旭川からの引力と富良野からの引力とが拮抗しており,上り列車も下り列車も同程度の乗降客がある。上富良野から旭川の高校に進学する場合は8割方列車で通学しているが,中富良野からだと下宿と通いが半々くらいとなる。富良野まで行くと旭川へ列車通学するのはまれで,むしろ札幌へ進学するケースが増える。
朝の7時40分頃は,上富良野で上下列車が交換し,駅が最も賑わう時間帯である。富良野へ通う学生はこの時間の列車を利用するが,発車時刻との壮絶な戦いが見られる。2番ホーム側に出入り口はなく,駅裏からホームに行くには跨線橋を2度渡らなければならないのだが,発車時間が迫ってくると,高さ1m以上はある柵を,ぴょんぴょん飛び越えてやってくる。女子高生もスカートをひらりとはためかせて越えてくる。前のほうから線路上を発車に待ったをかけるかのように走ってくる高校生もいたりする。
美瑛,美馬牛,中富良野に比べると観光客の姿は目立たないが,日の出山公園は駅から十分歩いていける距離で,途中下車にはお勧めできる。

●見どころ

□日の出山ラベンダー園(上富良野八景)

徒歩20分。駅を出て右手の跨線橋を渡るのが近い。3大ラベンダー園の一つ。高さ60mの山頂にあるラベンダー畑まで両側に花を見ながら登って行く。健脚向きだが,登頂したときの感動は大きい。十勝岳連峰,富良野盆地,芦別岳を一望にする最高の立地がラベンダーを引き立てている。「ラベンダー発祥の地」の碑が建つ。ラベンダーのシーズンは道路が渋滞し,車だとなかなかたどり着けないが,列車はそれほど混まず,駅から歩いて訪れるのが得策。(H7.8訪問)

□フラヌイ温泉 フロンティア フラヌイ温泉

駅から徒歩20分。十勝岳温泉への道道沿いにある。入口脇のサイロが特徴の,市街にある民営の温泉宿。源泉そのままの温泉を使用していることで,高い評価をされている。西の湯と東の湯は男女日替わり,熊の口から湯が噴き出している。サウナ,レストラン,ゲームコーナーあり。地元の日帰り客が多い。(H7訪問)

日帰入浴900-2200 無休 600円

□郷土館

徒歩15分。駅前を左折し,1kmほどまっすぐ進む。旧国道に突き当たり,踏み切りの手前で北西に曲がり,すぐ左手。大正8年建築の旧役場庁舎を再現。大正15年の十勝岳噴火被害の記録映画と,泥流で曲がった線路がメインの展示。

日月祝休 100円

□開拓記念館

駅前の信号を右折,直進2km。上富良野には2度の開拓の歴史があるといわれる。最初は明治30年の三重団体による開拓。三重団体は田中常次郎を長として富良野原野に入り,富良野平原開拓の祖とされている風俗のよい団体であった。しかし,開拓30年,大正15年の十勝岳爆発による泥流の直撃を受け,血と汗で切り開いた田畑は壊滅した。専門家からも上富良野村放棄やむなしとの声があがったが,三重団体出身の村長吉田貞次郎は復興反対派を押し切り,みごと復興させたのである。この事件は,三浦綾子の『泥流地帯』に描かれ,草分神社に碑が建てられた。平成10年ここに旧吉田貞次郎を移築し,新たに開拓記念館としてオープンした。十勝岳爆発,吉田貞次郎,田中常次郎を紹介する3つのビデオがある。(H11.8訪問)

900-1600 4-11月開館,月・祝休 50円

□博物館土の館(上富良野五大名所)

徒歩20分。駅前1km直進,国道を横断して左手の丘に上る。上富良野で創業した日本最大手のプラウメーカースガノ農機の博物館。土の博物館というのは珍しい。トラクターの展示は壮観。2001年には蒸気トラクターの復元運転が行われた。PRが控えめなので知る人は少ないが,穴場の博物館。眺めがいい。(H7.8訪問)

1000-1600 5-9無休,他は土日祝休 無料

□後藤純男美術館(上富良野五大名所)★★★

駅から2.5km。駅前を左折,最初の踏み切りを渡りひたすら2km直進。風光明媚な丘の畑の中に建つ,アトリエ兼美術館。日本画では平山郁夫に次ぐ巨匠といわれる。格の違いを感じる大作に感銘,入館料は高いが一見の価値あり。大きな美術館のように進入禁止の鎖もなく,間近に絵を鑑賞できる。(H10.9入館)

1000-1700 5-10開館 1000円


深山峠

駅前の信号を右折,農協前のバス停から旭川行きの快速ラベンダー号に乗車。所要8分。

□深山峠ラベンダーオーナー園(上富良野八景)

3大ラベンダー園の一つ。深山峠のラベンダー畑は,オーナー園として造成され,オーナーの名前を書いた白い札が規則正しく並んでいるのが特徴。ポヒーの赤い花とあわせて絵になる風景。

□深山峠展望台

変な形をしているが,展望台からは十勝岳山麓の波状丘陵が一望にできる。

□トリックアート美術館

全国にあるトリックアート美術館の一つ。製作者剣重和宗氏は平成10年に亡くなった。深山峠にある大型観光施設の中では最も早くに建てられた。

900-1800(5-10),1000-1700(11-4) 大人1300円,中高1000円,小人700円

▽上ふらのびいる館

上富良野は北海道で唯一のホップの産地であり,サッポロビールの研究農場もあるが,今のところそれとは関係ないようで,ハンガリアンテイストの4種類のビールを製造している。

900-2100

▽みやまアイス工房

7種類のアイスクリーム。

900-1800

▽深山物産館

地元の会社なのでお土産を買うのに良いのでは。

□レストハウス想い出のふらの

大観光地にはつき物の,団体ツアー向け食堂。お土産もラベンダーを中心に海産物まで何でもある。一度食事をしたことがあるが,これで観光客は満足するのだろうかという程度のものである。(2000.5訪問)

□貝の館ウッディライフ

世界の珍しい貝殻コレクション。

□伊藤剛写真館ザ・ピラミッド

深山峠の一等地にあるピラミッド型の建物。

□ノースランドギャラリー

写真家・高橋真澄がとらえた美瑛,富良野の四季。

1000-1700 5-10月開設 無料

□あきらフォトギャラリー

富良野・美瑛の風景写真。

4-10開館 月休 100円


十勝岳山麓

駅前から十勝岳温泉行きのバスが出ている。1日3往復,吹上温泉,バーデンかみふらの,カミホロ荘,凌雲閣に停車。終点の凌雲閣までで所要約45分,運賃490円。
上富良野はラベンダーが有名になる前は登山基地として知られたところで,駅から大きなリュックを背負ってバスに乗る人も多い。

□十勝岳温泉(上富良野八景)

ともかく,景色が素晴らしい。この景色と温泉があれば他に何もいらないということなのであろう,俗な土産屋などはなく,宿の建物も質素である。駐車場のトイレも最近やっときれいになった。登山基地の雰囲気が強い。車で行けるところとしては道内では銀泉台についで標高が高く,目の前には十勝岳連峰の山々が迫り,足元は断崖絶壁,眼下には富良野盆地,上川盆地を望み,最高の景色。三軒の宿の間は,徒歩で移動するのも良いと思う。夜は麓の市街地からも山の中腹に3軒の光が見える。(H10.9訪問)

▽凌雲閣

標高1280m。北海道内の温泉宿で最も高い位置にある。平成6年に全面改装。昭和33年に温泉が発見され,会田さん親子が馬で資材を運び,昭和38年にオープンさせた。昔の建物は浴場の岩がロビーにも突き抜けていたが,新しくなってこのワイルドさは薄れたという。38年の開業当時から露天風呂があり,露天風呂のある温泉宿のさきがけでもある。今はどこの温泉宿でも庭園露天風呂など趣向を凝らしているが,ここの露天風呂からの眺めに勝るところはないであろう。紅葉まつりのときは無料開放となる。

日帰入浴800-2000 無休 800円

▽安政火口

凌雲閣より徒歩30分のハイキング。硫黄臭漂う。

▽国民宿舎 カミホロ荘

1999年8月に全焼し。2000年11月11日リニューアルオープン。場所が少し移動し眺めの良いところに建つ。露天あり。

日帰入浴600円

▽翁山荘 バーデンかみふらの

山好きの外科医院長が昭和59年に建設。ロビーの暖炉が印象的。十勝岳温泉と源泉は異なり,翁温泉ということもある。(S59入館)

日帰入浴900-2100 500円

▽翁森林公園

バーデン上富良野周辺の鬱蒼とした森。

□吹上温泉(上富良野五大名所)

戦前から山スキーの基地として栄えた秘湯だが,近年立派な保養センターとして生まれ変わった。もちろん露天風呂もある。

▽吹上温泉保養センター 白銀荘

平成9年1月オープン。巨大な山荘風の建物。岩風呂の室内風呂のほか,露天風呂は計12と充実。それぞれ湯温が異なる。展望はきかないが,仙境の雰囲気。(H11.4入浴)

日帰入浴1000-2100 600円

▽吹上露天の湯

1991年に設置。ドラマ北の国からで黒板五郎と小沼シュウが入浴したことで全国的に有名になった。混浴,無料,24時間いつでも入浴者がいる。盗難に注意。

美馬牛 北海道駅前観光案内所 西中